第25話 いたってシンプル
開始の合図とともに早速くるみを拾った。
……これ、むっちゃ硬いぞ。
素手じゃ到底割れない……。
ザッピーノはペンチを片手に、くるみをそこに挟んで力む。すぐには割れなかったが、しばらくしてくるみの1つが弾けた。
「ガハハハッ! オマエは苦戦しているようだがオレはもう1個割れたぞ! ペンキなんかを選んだ自分を恨めよ!」
調子こきやがって。
急いであたりを見回し、それからペンキのフタを開けて、急いでそれで地面を掘った。
くるみを叩いて割れそうな石を探すためだ。
周囲にちょうどよい石は転がっておらず、地面に石の表面が見えていたのでそこを掘ったが、それは小さい石ころだった。
ザッピーノのほうから、また1つ、くるみの割れる音がした。
今度は、ペンキのフタの上にくるみをのせる。そこに思い切りジャンプして踏みつけた。
割れなかった。いや、若干軋んだかもしれない。ただ、さっき掘ってわかったが、ここらは土が柔らかくて踏みつけても、くるみに十分な負荷がかからないから一回では割れない。ただ何度かやってやっと1つ割れたが……。
ザッピーノは3個目のくるみを割っていた。
俺はまだ、1つしか割れていない。
奴はもう、自分のくるみを割ることに集中している。このままいけば間違いなく奴は勝てる。俺のほうには目もくれない。
間に合わない。
俺はくるみを割ることを諦めた。
「ほらよ」
「え? うおああああ?!」
だから、奴に任せることにした。
自分のくるみの入ったザルをザッピーノのくるみの入ったザルにぶちまける。
そしてその上にピンクのペンキも思い切りぶっかけた。ついでにザルの中をかき混ぜる。
ピンク一色になって、くるみは区別がつかなくなった。
「オ、オマエ……なにしてんだよ!」
怒るザッピーノに、俺はペンキの缶を放り捨て、ニヤついた。
「あとはよろしく」
「ハァ!? ふざけんな! おい女神! こんなのルール違反だろ!?」
ザインは首を横に振った。
『いいえ。ルール違反ではありません。サイキ様は隠したり奪ったりしておりません。アイテムを使用しただけです。仮にそれらの行為を行ったとしても、ルールの通りです』
「だとよ。でもま、仕方ねえな。ひとつだけ俺が割っておいてやるよ。…………よし、5秒経っても電流は流れない。このくるみは俺のだ」
俺はそのピンクに染まった1つを離れたところに放って、元の位置に戻った。そしてまだ困惑しているザッピーノに提案する。
「提案だ。おまえがそこにあるくるみを残り2個にするまで、俺はあそこのくるみを割らないでおくよ」
「ど、どういうことだよ!?」
「五分の勝負をしようじゃねえか」
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