第19話 決着


『カード、オープン』



 6回戦目は、もう消化試合だった。


 法力勝負はどちらかが継続不可能にならない限り、つづけなければならないみたいだ。


 ちなみに最後は、俺が『チョキ』でケイジールも『チョキ』だった。『グー』出せよ、最後くらい勝たせてやろうと思ったのに。



『今回の法力勝負、《特殊ジャンケン》の勝者はサイキ様です』


「よしゃよしゃよしゃあー!!」



 すると展開されたバリアが解除されていく。




「サイキさまぁー!!」




 まだバリアが解除しきる前に、それを飛び越えてキリアは俺にむかってダイブしてきた。


 角が刺さらなくてよかった。でもすげえ痛い。キリアは倒れた俺に馬乗りになりながら目をキラキラと輝かせる。



「本当にすごかったです! 本当にもう、本当に……すごくて、こんな私を、助けてくれて、ありがとうございました!!」


「フハハハッ! チョロいもんよ!」



 ……ま、本当は結構危なかったんだけどな。



「……って、キリアちゃん。泣いてんの?」


「うぅ、ずみまぜん……! いろいろと、思うどごろがあっだから……!」



 それもそうか。育ての親に厄介払いされて、売り飛ばされそうになったんだから。



「キ、キリア……」


「………………叔父さん」



 おっ、あのクソオヤジ。ようやく目が覚めやがったか。よし、もう一度寝させてやるか。



「どいてくれ、キリア。悪いようにはしない」


「サイキさま……今、すっごい悪い顔してる」


「おう。正解だ」



 キリアは、心配ないよ、と笑顔を見せる。



「ありがとうございます。でも大丈夫です」


「そうか」



 キリアは叔父の前に立った。



「キリア……すまなかった!! 本当にすまなかった!! オレが悪かった!!」



 深々と謝る叔父、それを見て、キリアは俺のほうに目をやる。



「サイキさま。これが本当かウソか、わかりますか?」


「んー、どうだろうな……いっそのこと、コイントスで決めるか」


「あっ! 面白そう」


「うえぅっ!?」



 俺は法具の金貨を取り出し、指に乗せた。



「女神の顔があるほうが出たなら許す。ないほうなら、許さない。ほれっ」



 金貨はしばらく空中を舞い、俺の手の甲に落ちる。……なるほど。




「どうやら女神も許さないみたいだ」


「叔父さん、今までありがとう。さようなら」


「ちょっ、ちょっとそんなので——」



 キリアは叔父の両腕を捕まえると、まさに鬼の形相で、ぶん回して小屋の壁にぶん投げた。


 叔父は飛び、小屋には穴が空き、大きく埃を立てた。


 あんなのくらったら骨がバキバキになりそうだけど、まあ異世界人なら大丈夫だろう。……俺、知らね。



 その光景を見ていたケイジールは腰を抜かしていた。



「こ、ここまで、オーガの力が強かったなんて……」


「そういえば、あんたもキリアのことバカにしていたよな。もう法力では守られていないみたいだし……コイントスするか?」



 腰抜かすケイジールを前に、威圧感をぶち撒けるキリア。


 ケイジールは慌てて頭を地面に擦り付けた。



「大変、大変、申し訳ございませんでした!! このような無礼は金輪際いたしませんので、どうかこの、田舎あがりのバカ者に、どうかご容赦を!!」



 あれだけ田舎者バカにしておいて、おまえ田舎出身なのかよ。



「どうしますか、サイキさま?」


「じゃあ、そうだな。旅道具一式を俺にくれ。あとあり金も半分よこせ」


「そんな! 法具だけは! 法具だけ……旅道具でいいんですか?」


「ああ。それで許してやる」


「さっそくご用意いたします!」



 商人らしく現金な奴だ。


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