第16話 勝負の続き


 動揺するケイジールは、ゲーム中にもかかわらず問いただしてきた。



「おま、お前はっ! だって、さっき……1を押していたではないか!?」


「なんでそれがわかるんだ?」


「あっ、いや、それは……」



「いいって、いいって。もうネタはとっくにバレてるから。俺の体の動きを見て判断していたんだろ?」



「!? だ、だったら! なんで2回戦のときに、それをしなかった!?」



「そのタイミングでやってどうする? それがわかっているとはいえ、そこで隠しながら画面を押しても結局は25%だ。だったら1回目はわざと負けて、お前の“性格”を見て、次で仕掛けることにしたんだよ」



「性格、だと?」



「最初の一回は、4分割されたウィンドウ画面の右側を、それも区切られたラインよりも気持ち上の部分を押した。数字の画面で言うと、ギリギリ2にあたる箇所だ。で、おまえはどこを押した? 安全だろう左上の1でもない、まして危険そうな右下の4でもない。絶対的に離れて安全な対角にある3を選んだ」



「そ、そんなの、たまたま押しただけかもしれないだろ!」




「ヒリついてねえんだよ。あんた」




「は?」



「25%って数字はな、割と当たっちまうものなんだよ。……パチンコでもそうだった」



「パ、パトゥリンコ?」



「いや、それは関係ない。こっちの話。とにかくだ。そんな割と当たっちまう確率を前にしても、あんた余裕だった。まるで安全なところに立っているみたいに」



 ケイジールは黙って聞いていた。そしてなぜか女神ザインも。まあ、それは放っておこう。



「商人だからつまらないところで損をしたくないのか、それとも常に安全なところにいたいという性分からなのか、そういうあんたの“性格”が、絶対に安全な対角にある数字を安易に選んだんだろうなぁ。ヒリつきもせずにな。そりゃあ……誤魔化せねえよ、勝負してきた人間の目は」



「……なんでこんな——」



「あんたは、てめえは俺を田舎者のバカだとナメてかかった。そうだろ?」


「そ、それは……」


「いいんだよ、別に。そういうカモは食い殺すまでだ」


「ヒィッ……!?」


「他のゲームのルールが覚えられないから同じ《特殊ジャンケン》がいい、だぁ? んなわけねえだろ。勝つために選んだに決まってんだろうが。見られていたゲームをそのままやるようなバカとは違ってなぁ……!」



 気づけば俺はケイジールを睨みつづけ、奴は怯えていた。



『サイキ様、ご歓談はそこまでに』


「ほう? 女神も冗談が言えるのは知らなかったな。じゃあ5回戦目やるか」



 ゲームに戻り、ザインが告げる。



『5回戦目。カードをセットしてください』



 目の前ではケイジールが目を泳がせながら、選ぶカードを迷っていた。



「先に言っておくが、もうてめえの手札はわかってんぞ」


「そんなわけ……!」


「残りは、それぞれ1枚ずつだ」


「……!?」


「あんた、ボロボロに表情が出るなー。それがフェイクなら俺の負けだよ」



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