第15話 4回戦《ケイジール視点》



『4回戦目。カード、オープン』




 サイキ:『グー』



 ケイジール:『パー』



 

「うわっ」


「よーし、よーし! 勝ったぞ!」


「おい! だからまだ勝負は決まってねえだろうが!」



 ったく、うるさい若造だ。どうせ特殊効果もこのワタシが勝つというのに。



「うーん……あー、クソ。どれにする」



 バカのくせに一丁前に悩みおって。



「やれやれだ。どうしようと確率は変わらないというのに。キミみたいな悩むタイプは商機を逃すから商人に向いてないよ」


「んだとコラ。ならさっさと決めてやるよ!」



「……! その潔さは認めてあげよう」




 

 押した。今、アイツは押したぞ。


 1を押した。完全に押した! ざまあみろ! バカ造め! 



「あ? なんだよ」


「……なんでもないが?」



 危ない、落ち着けケイジール。


 しかしまさか。


 二人揃ってこんなことにも気づかないとは。この世はバカばかりだ。


 だからワタシは賢い商人となり、成功しているのだよ。



 この『グー』の特殊効果はたしかに25%で勝てる仕組みである。しかしランダムに決まるわけではない。相手が“押して”決めるのだ。



 この数字を選ぶとき、目の前のウィンドウ画面は“大きく”4分割にされる。



 そして人は、無意識に数字の真ん中を押して選んでいる!



 画面は裏側からは何も見えないが、画面からはみ出た、選ぶ人間の動きは見えるのだ!



 アイツは、サイキは右腕で、しかも左上あたりに腕を伸ばしていた。間違いない、映る画面は同じもの、そして左上にあてがわれているのは、1だ!



『ケイジール様、選択をお願いします』


「うむ」



 もうワタシは迷わない。しかし安全を期して左上の逆、右下の4を選ばせてもらう。



 これで2勝目だ。2対1。

 残る勝負は2回。



 アイツは、『グー』と『チョキ』しかない。


 今のワタシの手札は、それぞれ1枚ずつ。


 それならば。


 安全な『グー』を出して勝つか、もしくは引き分けてもいい。それで最後は『パー』でも『チョキ』でも出せばいい。



 それで、今回の《特殊ジャンケン》のゲームは引き分け。



 つまり、ここで『パー』の特殊効果が発動する。



 引き分けた場合には、『パー』を多く握っていた、このケイジール様の勝ちということだよ!



 これで、これで、あの法具はワタシのものだ!! 最高だ、ワタシ!!

 


 いやあ、今から彼の悔やむ顔が楽しみで仕方ないよ。それを見ながらステーキでもいただきたいね。あっ、でもこのまま勝つのはツマラナイから5回戦では、あえてまた『パー』を出してみようか『——ヒットしました。サイキ様の勝ちです』






「よーし、やっ…………え?」





 ……今、ヒットって言った?






 ワタシの頭は混乱していた。その最中に響いたのは、アイツの笑う声だった。




「本当に素直に引っかかったなぁ。……おまえみたいなタイプは、勝負に向いてねえよ」



 その目は、闇夜の森で見たときの獣と同じ色をしていた。


 無論、それを見たワタシは怯えた。


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