第11話 俺の法力勝負


 ケイジールとの法力勝負、《特殊ジャンケン》が開始される。



 改めて《特殊ジャンケン》のルールを確認しておこう。





 ―《特殊ジャンケン》のルール―




 はじめに・

 このゲームは『グー』『チョキ』『パー』のカードを消費してジャンケンを行い、勝敗を決めるゲームである。



 1・手札が合計で7枚になるように、『グー』『チョキ』『パー』から好きな枚数を選ぶ。



 2・選び終えたあと、プレイヤーがどのカードを選んだのか互いに開示される。ただし、枚数は開示されない。



 3・その後は、お互いに手札を一枚ずつ消費して、カードでジャンケンをして勝ち負けを決めていく。



 4・特殊効果として『グー』は、25%の確率で『パー』に勝つことができる。



 5・ジャンケンを6回行い、最終的に勝ち数の多いプレイヤーが勝者となる。ただし、6回行っても勝ち数が同じだった場合は『パー』のカードを手札に多く選んでいた者を勝者とする。



 ――



 ケイジールはサクサクとカードを選び終えたようで、つづけて俺も選び終える。


 女神ザインは言う。



『互いにカードを選び終えました。それでは選んだカードタイプの開示をいたします』



 ケイジールは、まるでこの手順が時間の無駄とでも言いたげなつまらなそうな表情をしている。


 わからないでもない。ここで選んだカードの枚数も表示されるのなら戦略に関わってくるが、結局は選んだ『グー』『チョキ』『パー』が表示されるだけの行程。とくに意味はない。




 互いのウィンドウに同じ画面が表示される。




 ——



【ケイジール】


『グー』『チョキ』『パー』



【サイキ】


『グー』『チョキ』



 ——



ま、俺の場合は違うんだがな。




 ————


 バリアの外で待機するキリアは、サイキの手札に驚愕する。



「どうして!? なんでサイキさまの手札には、『パー』がないの!?」



 考えても考えても、純真なキリアにはその答えを導き出せなかった。



 ————



 呆然としたケイジールが叫んだ。


「……は、はあ!? パーは!?」


「あっ、忘れちゃった」


「お、おま、ふざけているのか!?」



 思わず口角があがっちまう。



「揺れてるなぁ。てめえの魂が」



「!?」


「俺には引き分けなんて勝ち筋はいらねえんだよ。勝つか負けるかの二択、それだけだ」


「バ、バカなのか? ……まあいい、あとで『パー』を選ばなかったことを悔やむがいいさ!」



 これでいい。


 まずは揺さぶって雑なノイズを奴の思考にたらし込む。これですこしの間、本来の思考能力をフルに発揮できない。開始前からのわずかながらリードだ。



 ただ、ここからが本当の勝負。

 お互いに手札の、それぞれの枚数はわからない。


 俺の手札は『グー』と『チョキ』のみ。


 ケイジールからすれば『グー』を出すだけで絶対に負けない。安牌がある。


 仮に『グー』が極端に多めの手札だった場合、俺が圧倒的に不利になるが……。



「……だが『グー』と『チョキ』だけなら……」



 奴はこのゲームの経験者で、商人だ。


 この『グー』の弱点を知っているなら尚更、そんな極端な手札にはしない。リスクを分散したバランス型の手札にするはず。いや、本当にそこは頼む。



「……まあ、何はともあれ」



最初の一手が俺にとって、大きなターニングポイントになる。



 女神ザインが言葉を放つ。



『1回戦目のカードをセットしてください』



 奴が、何を出すのか。



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