第9話 法は中立


 ケイジールに抵抗しようとしたキリアは、女神ザインの雷撃を浴びてしまう。



「うぅっ……」


「キリア!? おいコラ!! 何しやがるクソ女!!」



 女神ザインは冷徹に答える。



『キリア様は我々七法神のもとで賭物として正式に認められ、法力勝負によりケイジール様に権利が移行したのです。例え、賭物が知的生命体であり拒否しようとも、我々はそれを違法とみなし、権利の移行を執行するのみ』



「何言ってんだ? てめえ。そもそも本人が許可してないだろうが」



『ジゴベ様にはキリア様を育てた経歴があります。賭物の対象にできる権利があります』


「まさか親権の話か? いーや違うね。てめえらを見てわかった。この低俗な世界に親権なんて概念があるわけねえ。もういい。わかった」


『ご理解していただけましたか』



 俺はケイジールとかいう小太りをブン殴り、キリアに近づく。



「いくぞ、キリア。こいつらに付き合う義理はねえ」


「サ、サイキさま……」



 途端、全身が震えるほどに痺れだす。


 ザインによる雷撃、俺はたまらず叫び地面に崩れる。



『やれやれ、何も理解していませんね。法は絶対なのです。それが破られることなどないのです』



 殴られて倒れていたケイジールが立ち上がり、まだ動けずにいる俺を見下げて睨むと、脚を振り下ろす。



「何をっ! してくれるっ! このっ、野蛮人がっ!」


「サイキさま!? やめて!」


「うるさい! お前は引っ込んでろ! 混血者が! これから成金の変態どもに売り払われる自分の身でも案じていろ!」



 そして何度も蹴りを入れるケイジールの脚を、俺は掴まえた。



「なっ!? 離せ……!」


「……勝負だ」


「はぁ!?」



「法力勝負だ!! このやろう!!」



 脚を振り払い、立ちあがり、目の前で怒号をあげた。

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