第8話 賭物がいた


「お、叔父さん! ど、どういうこと! 私が“賭物”って! ウ、ウソだよねぇ?」



 うつむくジゴベは無言で何もない地面と向き合っている。



「どうして!? どうして……? 私、なにか悪いことした? ちゃんと家事もやってたし、魔獣から家を守ったことだって——」



「お前が混血だからだよ!!」



「……ッ!?」


「お前の存在のせいで、オレは国の人間から白い目で見られて……こんな辺鄙なところで生活しなくちゃならなくなったんだ……! そしてここでも変な目で見られて、大体なぁ! お前が姉さんの子じゃなければ誰が養うかよ! 他の村人が出て行ったのだってなあ、お前が、お前なんか……お前なんか——」




「てめえなんざッこうだオラァー!!」




 体が勝手にドロップキックをかましていた。


 ジゴベは吹っ飛び、俺も砂まみれになるがすぐに立ちあがる。



「ふざけやがって。ハーフってだけで差別されんのかこっちは。俺のいた世界で余ってる多様性を分けてやろうか? あ? あと負け様が一番に気に入らねえ」



「サ、サイキさま?」


「おいキリア。自分の今は、今ある自分で切り開け。おまえにはその力があんだろ? 救世主さまを真似てやってみろ」


「! わかりました!」



 キリアはケイジールを睨みつける。



「お、おい。やめろ」


「こんのぉ——」




『それは、《違法》と認定します』




 再び現れた女神ザインが、突如としてキリアに雷を落とした。


 彼女の悲鳴が響く。

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