第7話 勝敗




 5回戦目を勝ち、困難な状況から勝負できるところまで追いついたジゴベは見るからに興奮していた。



「ヨシ! ヨシ! いけるぞ! あともう一回だけ切り抜ければ……勝てるぞ!」



 同様にキリアも興奮している。



「叔父さん、今回は法力勝負で勝てるかもしれないですよ! ね! サイキさま!」



「………………」



「サイキさま?」




 やっぱりケイジールから“ヒリつき”を感じねえ。


 さっきからあった違和感はこれか。




 ケイジールはジゴベの手札の大体を読んでいる。


 もしかしたら以前にも同じゲームを経験しているのかも。

 それに普段の付き合いからジゴベの人間性を把握していることもある……。


 そしてケイジールは、さっきのジゴベの発言にかすかに反応していた。



 あー、だとすると……こりゃ『詰み』だ。



『最終戦、6回戦に使用するカードをセットしてください』



 女神の言葉に二人はカードをセットする。



「最後の勝負ですね。ジゴベさん。ですが、恨みっこ無しですよ」


「……?」


「楽しかったです」




「それでは。カード、オープン」



 互いのカードが裏返る。





 ……やっぱりこうなったか。




 

 6回戦は、お互いに『グー』を出していた。




「えっと、お互いに『グー』で引き分けだから、勝ち数も同点でゲームも引き分けですよね?」


「そうじゃない。君の叔父さんの負けだ」



 俺はウィンドウを出して、キリアにもわかるようにルールの項目部分に指をさした。


 

「ああっ!? 引き分けの場合は『パー』の数……!?」



 ウィンドウには、それぞれの『パー』を手札に選んだ枚数が表示されており、ケイジールは3枚で、ジゴベは1枚だった。



「最後の勝負……君の叔父さんが『もう一回だけ切り抜ければ』と発言したとき、手札に『グー』しかないことを読まれたんだ。いや、あそこで完全に読み切った。あそこがターニングポイントだった」



 女神ザインは宣告する。



法力勝負特殊ジャンケンの勝者は、ケイジール様です』



「くそっ……! くそうっ……!」



「叔父さん……」



 ……あんな姿、子供に見せるもんじゃねえよ。



 バリアが解かれ、ケイジールは高らかに笑った。



「いやー、いい勝負でしたなぁ! ジゴベさん! でも今回もワタシが勝たせてもらいました! ではそちらの賭物、いただいていきますよ。……おっ、ちょうどいいところに賭物が“いました”ねえー!」






「え?」





 そう言ってケイジールは、悲しむキリアの手首を掴んだ。




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