第6話 希薄な望み


 バリアの中で、キリアの叔父のジゴベと、商人のケイジールが《特殊ジャンケン》の5回戦目が行われる。




『5回戦のカードをセットしてください』



 女神ザインがプレイヤーに指示し、ケイジールとジゴベが、目の前に用意されているウィンドウで、次のジャンケンに使用するカードを選択する。



 ケイジールの手札は、

『グー』1枚、『パー』2枚。


 対するジゴベの手札は、

 『グー』3枚。


 勝負は残り2回。


 勝ち数はケイジールが1つ多い。


 ジゴベが圧倒的に不利だ。


 ジゴベがこのゲームに勝利するためには、最低でも『グー』の特殊効果で、25%の勝ちを『パー』から2回ももぎ取らなければならない。


 その25%をどんな風に決めるのか、まだわかっていないが……。



「くくく、ジゴベさん。大丈夫ですか? 私の勝ち数は2で、あなたはまだ1ですが」



 ケイジールが嫌みたらしくジゴベを煽っている。対してジゴベは動揺しつつも声を荒げた。



「ま、まだ、勝負は終わっていないだろ!」


「それはたしかに。お手並み拝見ですねぇ」



 お互いに目の前に浮かんでいるウィンドウからカードを選んだようだ。


 するとお互いの選んだカードが、バリア内の空中で、ホログラムのように大きく裏向きで現れた。


 女神ザインが言う。



『カード、オープン』



 浮かぶ2枚の大きなカードの表面に、絵柄が表示され、相手に見えるように裏返される。




 ケイジール:『パー』



 ジゴベ:『グー』



「おっ、ワタシの勝ちですねぇ」


「何を言っている! 忘れたのか、『グー』には特殊効果があるだろう!」


「おっと失礼、そうでした」



 すると、ジゴベ側のウィンドウ画面が切り替わり、画面を四分割にしたマスに1、2、3、4、と数字が割り振られた。



 その1つをジゴベがタッチする。


 次には、ケイジール側のウィンドウも同様なことが起きる。


 

「ふーむ、どれを選びましょうか……」


「おい、さっさと選ばないか!」


「おー、怖い怖い。では、これを」



 ケイジールが画面をタッチしたところで、女神ザインが告げた。



『ジゴベ様の選んだ数字は4。ケイジール様の選んだ数字は、4。ヒットしました。特殊効果の成功。5回戦、ジゴベ様の勝ちです』


「あらら……」


「うおおおお! よし!」




 特殊効果の25%というのは、そういう仕組みか。


 『グー』を出した側が、先に1から4までの数字を1つ選び、そのあとで『パー』を出した側も数字を1つ選び、同じ数字を選んでいれば、『グー』の勝ちになる。


 これなら25%の勝率になるうえに、自分で選べるから自力感があって……個人的には好きだぞ。そういうの。



「すごい! 叔父さんが勝ちましたよ! サイキさま! あと1回勝てば、叔父さんの勝利ですよ!」


「……そうだな」



 可能性は、一応は残っている。


 残っているはずなのだが、妙だ。



 奴から、ケイジールから“ヒリつき”を感じねえ。

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