銀糸と星が織りなす痛快で不条理な英雄譚
- ★★★ Excellent!!!
<第一部 序章1『銀の十字架は地に堕ちる』を読んでのレビューです>
銀髪の少年シルバー・ヴィンセントが「ギグ・マーガの星」という宿命を背負い、理不尽な世界に抗っていくシーンから物語の幕が上がる。冒頭から塔の上に立つ主人公の姿が映し出され、そのまま銀糸の妙技や月光を背負った舞台装置のような演出が畳みかける。叙情的な静謐と、大胆なアクション、さらに自己ツッコミを交えたユーモアが同居し、緊張感と笑いが交互に訪れる構成になっているのが面白い。
個人的に印象的だったのは、
「……まさか今の一閃――俺、自分の足元を断罪……?」
という場面。英雄的な登場から一瞬で転落し、しかも自らの技で足元を断ち切ってしまう。この落差が鮮烈であり、悲壮感よりも可笑しみが勝つ。そのバランス感覚が物語全体のリズムを象徴しているように思えた。
主人公の言葉の端々に漂う誇張と皮肉を楽しみつつ、戦闘や失敗さえも舞台演出の一部と捉えて楽しめる。理不尽さを笑い飛ばす強さと、痛快なテンポ感を存分に味わえる作品と思えます。