人生ゲーム
ロックホッパー
人生ゲーム
-修.
なぜ、俺は両手で剣を持ってドラゴンと向き合っているのか。目の前のドラゴンは、全長5mはあろうかという胴体をくねらせ、テラテラと鱗を光らせている。そして、少し開いた口からはときどき小さな炎を出している。
そうだ、俺は、考古学者の友人が中東のどこかの王族の墓で発掘したボードゲームに、他の友人2人と共に付き合わされていたのだ。ボードゲームにはすごろくのように100個ほどの連続したマスが描かれており、中央にはルーレットのような回転するつまみがある。それぞれのマスには見たことのない文字で文章が書かれていた。考古学者の友人はいくらか読むことができるそうで、駒が止まったらそこに何が書いてあるか教えてくれることになっていた。
そして隅に置かれた4つの駒は、細かい装飾が施された金色の牛車ようだった。友人が言うには、今までは駒がボードに張り付いていて全く動かせなかったが、4人が揃うと普通に動かすことができるようになったそうだ。
そして俺が最初にルーレットを回すと金色の牛車の駒は勝手に動き、あるマスに止まった。そして友人が文字を読み始めた瞬間、俺は見たことのない場所でドラゴンに向き合っていたのだ。
目の前のドラゴンはゲームと無関係ではないだろう。ゲームを始めるとゲームの世界に取り込まれるという展開に違いない。であれば、ボードのマスには「ドラゴンをやっつけてゴールドを手に入れた」とでも書いてあったのではないだろうか。ということは、俺はこのドラゴンを倒さないといけないらしい。ドラゴンはおどろおどろしい感じでのたうっているが攻撃はしてこない。俺がドラゴンに食われて終了という落ちではゲームがおもしろくなかろう。ならば・・・。
俺は思い切ってドラゴンに向かって踏み込み、上段から切りつけた。ドラゴンはあっけなく倒れ、その場に横たわった。その瞬間、どこかで金貨が落ちたようなジャラジャラといった音がした。
俺は、ドラゴンをやっつければ即座に元のゲームをやっている場所に戻ると思っていた。しかし、俺の予想に反して元の場所に戻ることはなかった。よく考えてみれば、他の3人がルーレットを回して、それぞれが止まったマスのミッションを終了するまで、俺は現在のマスに留まっていないといけないようだった。
ほどなく俺はボードゲームの前に戻った。しかし、周りにいたはずの友人は消えていた。俺と同様、止まったマスの世界で次の番を待っているのだろう。これは全員がゴールするまでゲームを止められないようだ・・・。
「仕方ない。」
俺は2回目のルーレットを回した。再び、駒は勝手に動き、いくつか先のマスで止まった。その瞬間、今度は天蓋のついたベッドに座った、青い布を頭からすっぽり被った人らしきものが目の前に現れた。これは中東の女性が身に着けるブルカではないだろうか。
もし女性が出てくるとしたら、人生ゲームなら結婚ということになるだろう。その場合、俺のミッションは何だろう。何をしたら結婚したことになるのか、キスか、それとも、もっと深いスキンシップが必要なのか。いやいやそんなハッピーな展開とは限らない。ドラゴンがでてきたことを考えると、布を外すとメデューサが現れて俺は石にされてしまうかもしれない。その場合、1回休みになるのだろうか。
「ままよ。」
考えても仕方ないと思い、俺はブルカをそっと外した。そこには中東特有の彫りの深い美人がほほ笑んでいた。その瞬間、再び金貨が落ちた音がした。どうやら顔を見ることがミッション完了だったようだ。何かそれ以上のことを期待していた自分が恥ずかしくなった。
その後も、ルーレットを回して、家畜を買ったり、家を買ったり、商売をしたり、盗賊に襲われたり、いろいろなミッションをこなしながらゲームを進めた。そして開始から何時間か経ったころ、全員がゴールし、ボードゲームの前に4人が戻った。そして、獲得した金貨の数とランキングが空間に浮かび、ゲームが終了した。
俺はボードゲームを通じて現実とは全く違う異世界を体験してきたが、実はそんなことはどうでも良く、中東顔の美女と一緒に苦労しながらミッションをこなしたことが忘れられない思い出となっていた。
おしまい
人生ゲーム ロックホッパー @rockhopper
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