第四話 シルヴィア、謁見する
ヴァリアント城の正門前に到着した。私はスレナを連れてロイ様と玉座の間に向かう。
「シルヴィア様、大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です。ご心配なさらずに」
ロイ様が心配している。長い間、馬に乗っていたから疲れていると思ったみたい。でも、私は大丈夫。これから、ベネディクト国王陛下に会うんだ。疲れた顔なんて見せられない。
「スレナ、何かあったら助けてね」
「分かっております」
すれ違う警備兵がロイ様に頭を下げている。やはり、第二王子は違う。公爵令嬢の私より権力があるから頭を下げざるを得ない。
「シルヴィア様、お気になさらずに」
「はい」
玉座の間の前に到着した。ベネディクト国王陛下はいるだろうか。
「すまない。父上と話したいのだが」
「かしこまりました。少々お待ちください」
近衛兵が玉座の間に入っていった。いよいよだ。
「ロイ様、どうぞ中へ」
「うん」
ロイ様と一緒に玉座の間に入った。そこには、クリフォード様もいる。これは一体どういうこと?
「ロイ。今日は何用だ?」
「父上。突然ですが、僕とシルヴィア様の婚約を許してください」
クリフォード様がロイ様を睨んでいる。怖い。
「ロイ、何を寝ぼけたことを言っている。シルヴィアは私の元婚約者だぞ」
「分かっています。だけど、僕はシルヴィア様が好きなのです」
この程度で引き下がらないか。なら、私も。
「ベネディクト国王陛下。私からもお願い致します」
「シルヴィア、本気か?」
「はい!」
「うむ…………」
クリフォード様が私を見つめている。こんな時に考えることじゃないけど、私はエレナより美人で教養がある。そんな私を振ってエレナと婚約したクリフォード様が悪い。強いて言えば、クリフォード様が首を突っ込むことではないのだ。
「シルヴィアが自らここに赴いたということは、ふたりで話し合ったということだろう。ロイ、シルヴィアの辺境での暮らしについては調べたのか?」
「はい、全て把握しております」
「では、聞く。辺境の地で一体何が起きているのだ?」
ロイ様が一生懸命に私が作った電化製品のことを説明している。あと、辺境の地と同じ環境でないと電化製品が扱えないことも説明してくれた。
ベネディクト国王陛下は頷きながらロイ様の説明を真剣に聞いている。話が通じて良かった。
「なるほど、辺境の地と同じ環境、つまり河川がないと電力が供給できないと」
「その通りです」
「用水路を作るのにも長い年月がかかる。やはり、ここでは無理か」
ベネディクト国王陛下が真剣に考えている。やはり、電化製品の力は凄い。
「シルヴィアよ、他の手段で電力を発生させることは可能か?」
「燃えるごみを焼却して発電させる、廃棄物発電というものがあります」
「燃えるごみ? どんなものだ?」
「紙や木材、生ごみなどです」
ベネディクト国王陛下が言いそうなことが分かる。廃棄物発電なら家庭から出たごみを集めて燃やせばいい。すなわち、ごみを回収する者を募集し、仕事を与えて電力を作るのに貢献させる。そうすれば、廃棄物発電が成立する。まさに、一石二鳥だ。
「ロイ。シルヴィアの隠された力というのは、この世にない新しいものを作れるのか?」
「はい、シルヴィア様のお力なら可能かと」
「だが、女子ひとりに大仕事を任せるのは気が引ける。クリフォードもそう思うだろう?」
クリフォード様が私の目を見ている。何か聞きたそうだ。
「シルヴィア、君の力は万能なのか?」
「いえ、私自身が構造や特性、性質を理解していないと作れません」
「なるほど、だから君は勉学に励んでいたのだな」
本当は辺境の地でスローライフを送りたいがために勉強していたなんて言えない。でも、知識を欲していたのは事実だ。私としてはもっと勉強したい。
「シルヴィア、婚約を認める代わりにロイを助手にしてくれないか」
「ロイ様を助手にですか? 構いませんが、一体何をお考えに?」
「私はどうしても電化製品というものを使ってみたいのだ。だから、ロイを助手に付けて廃棄物発電を現実のものにしてほしい」
「それはやってみないと分かりません。大規模な工事になるかもしれませんし」
「そうか。だが、やってみてくれ。頼む」
こんなベネディクト国王陛下見たことがない。自国の発展の為に頭を下げるなんて……、余程電化製品を使いたいとみえる。
「分かりました。ロイ様を助手にし、挑戦してみます」
「よろしく頼むぞ。シルヴィア」
廃棄物発電所が作られれば、王都全体に電力を供給できる。だが、廃棄物がなく、燃やせない状態になったら発電できない。ごみがどれほど集まるかが肝となる。
私としては、最初は良いけどあとでつまずくと思っている。ごみの供給に関してはロイ様に相談しよう。
「では、私達はこれで失礼致します」
私はロイ様とスレナを連れて玉座の間から出た。
「シルヴィア様、大変なことになりましたね」
「はい。でも、目標ができました」
「目標というのは?」
「母国の文化発展に協力するということです」
母国の文化発展に貢献すれば、多大な褒美とロイ様を手に入れることができる。もしそれが現実のものとなれば、私は偉業を成し遂げた偉人と称えられるだろう。
「シルヴィア様。活動拠点についてなのですが、やはり辺境の地ですか?」
「今のところは辺境の地でいいでしょう。準備が整ったらまた王都に来れば問題ないと思います」
「分かりました。では、辺境の地に戻りましょう」
え? ロイ様も戻るの?
「あの、ロイ様。貴方も辺境の地に行かれるのですか?」
「シルヴィア様の助手になった以上、側にいないといけないでしょう」
「そうですよね。分かりました」
よし、辺境の地に戻って準備しよう。それからでも遅くない。
「ロイ様、辺境の地に戻りましょう」
「はい!」
私はふたりを連れてヴァリアント城の正門前に行き、馬に乗って辺境の地に戻った。
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