第33話 渋谷ダンジョン 第10層
【渋谷ダンジョン・第10層 最奥】
(空気が……重い)
広間に一歩、足を踏み入れた瞬間、ユウトはそう感じた。
肌にまとわりつく魔素。足音を吸い込むような静寂。
中央に立つのは、全身を黒い鎧で包んだ巨体――《魔鎧兵グロアス》。
その姿を見た瞬間、直感が告げていた。
(――こいつ、強い)
でも、不思議と怖くはなかった。
横を見れば、マオがいた。
緊張も焦りもない。ただ静かに、目の前の敵を見据えている。
(この人と一緒なら、いける)
そう思った。
「ユウト、下がるなよ。タイミングは……見て合わせて」
「はい」
俺の“目”は、相手の動きの予兆を読むためにある。
僅かな肩の沈み。重心の揺らぎ。
剣を握る力の入り方。呼吸の浅さ――
(……次、右上から叩いてくる)
身体が、先に動いていた。
攻撃が来る一拍“前”に、ステップで横へ跳ぶ。
「……一拍回避か。やるじゃん」
マオの横顔がわずかに笑っていた。
次の瞬間、彼女の斬撃がグロアスの首元に突き刺さる。
(美しい……)
ユウトは一瞬、本気でそう思った。
無駄のない動き。刃が“あるべき場所”に吸い込まれていくような斬撃。
自分が目指すべき剣の“完成形”が、そこにあっ
静寂が戻った広間の中、ただ、自分の鼓動だけが響いていた。
「魔法耐性高い。けど……動きは鈍い」
マオが呟いた瞬間、ユウトが風のように前へ。
「先に切り込む!」
一拍先の間合いで飛び込んだユウトの剣が、グロアスの腕に斬りかかる。
だが――重い金属音が響き、刃が滑った。
「……硬いな」
「いい、あたしが下げる」
マオがユウトと入れ替わるように前へ出る。
その瞬間。
「――下段来るわよ!」
マオの声とほぼ同時に、グロアスの盾が地面を払った。
ユウトが即座に回避。
ふたりの連携は、あの一拍回避を思わせる緻密さだった。
「エミ、膝狙って!」
「了解――“凍結破脚(こおりのはきゃく)”」
エミの詠唱とともに、グロアスの脚部に氷結の杭が走る。
一瞬の硬直。そこを見逃すマオ隊ではない。
クロがその隙を突き、双槍を肩口へ深く叩き込む!
「削れる! 押せる!」
リュウジが叫び、盾の裏から突進し、ユウトが右から回り込む。
そして――
「今だ、いけ!」
マオの号令とともに、ユウトが跳ぶ。
(この距離、この体勢――いける)
刃を閃かせながら空中で半回転し、
グロアスの頭頂部へ、真下からのカウンター斬撃!
「――ッ斬!!」
霧のような魔素が弾け飛び、
グロアスの巨体が、音もなく崩れ落ちた。
──ボス撃破。
「……やったぁあああ!!」
シズカが叫ぶ。コメント欄が爆発する。
> 「かっこよすぎ!!」
「ユウト最後何やったの!?」
「マオ隊強すぎ問題」
「これ伝説回確定」
「シズカありがとう!ありがとおおお!!」
ユウトが静かに剣を納めると、
「やるじゃん、少年」
マオが、拳を差し出してきた。
少しだけ照れくさくて、それでも――ユウトはそれを静かに、拳で返した。
(これが……10層の頂か)
けれど、満足はなかった。
むしろ、もっと遠くを見たくなった。
この人の背中に、追いつきたい。
この世界の“最前線”に、立ってみたい。
そう思った――確かに、強く。
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