第34話 ユウト、打ち上げで驚く

【渋谷 ダンジョンギルド酒場「ブレイカーズ」】


10層制覇を祝う打ち上げは、ギルド公式の酒場で行われていた。


マオ隊、シズカ、そしてユウト。

仲間たちの顔には満足感と、少しだけ疲労の色。


「いや~あの一拍回避、マジで鳥肌もんだったぞ、ユウト!」


リュウジが大声で言うと、クロも頷きながらグラスを掲げた。


「ほんと。マオ姐とあんな綺麗に噛み合うとか、才能ってあるんだねぇ」


「うむ、戦術的価値が高い」


と、淡々と分析するのはエミ。


そこに――ひょっこり現れた男がいた。


「よ、邪魔するぞ」


現れたのは、落ち着いた目をした中年の男。


「……父さん?」


ユウトが立ち上がる。


その男――ヒデオは、静かにみんなに頭を下げた。


「息子が世話になってる。少し顔を出させてもらった」


マオがその顔を見て、一瞬、目を細めた。


「……おい、まさかお前……、第0世代のヒデか?」


その一言に、酒場の空気が一瞬で変わった。

マオの声は静かだったが、その背中に宿った緊張は、誰の目にも見て取れた。


ヒデ――かつて、渋谷ダンジョン黎明期に名を馳せた“第0世代”の生き残り。

今となっては伝説級の古株、その名をリアルタイムで知る者は限られている。


「……久しぶりだな、マオ。元気そうで何よりだ」


ヒデオが軽く手を上げると、再びユウトが目を丸くした。


「……父さん?」


ヒデオはマオのほうを向いたまま、


「俺の予定より、,ユウトが有名になるのが3年早い。マオ、これはお前の責任でもある。わかってるよな」


マオは煙草に火をつけ、わざとらしくため息をついた。


「……ったく。責任押しつけるの、昔っから変わらないんだから。わかってるよ。あんたの息子を、変なやつらに食い物にさせる気はないって」


そう言って、グラスを置くと、視線をユウトとシズカに向けた。


「二人とも。明日、“ミネ”って女を紹介する。元Aランカーの補佐やってた、凄腕のエージェントだ。今はフリーだけど、実力も信用も保証する」


「エージェント……ですか?」とシズカが身を乗り出す。


「そう。収益管理、契約交渉、スポンサー対応……あたしらが口出すより、プロに任せた方が早い。あんたら、もうそういう立場にいるって自覚、持ちな?」


ユウトとシズカは一瞬顔を見合わせたが、すぐに揃って頷いた。


「……お願いします」


「よろしくお願いします」


ヒデオは、その言葉を聞いて静かに目を閉じた。


「――よし。それでいい」


こうして、翌日からユウトたちには、渋谷でも一目置かれるプロのエージェントがつくことになった。



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