第2話 この世界とは

異世界管理人第2話 この世界とは


あの事件以降フェルマは職を失った。

職場は労基により信用がガタ落ち、色んな所から仕事のキャンセルが鳴り止まなかったと、フェルマの友人が話していた。

仕事を辞めて1ヶ月程経ちフェルマは溜め込んでいた貯金でしばらく過ごしていた。


「…学生の時にバイト頑張っててよかったわ。」中学の頃から暇な時間全部をアルバイトに費やし、社会人になるまで使わなかった金を使い家でぐったりとしていた。


ブラック企業にいる頃はほとんど貯金できなかったから頑張った甲斐がある。

そしてこれ程までに仕事に行かなくていい優越感は無かった。やっと自由を手に入れたとフェルマは実感した。


だが、金は無限じゃないから仕事を始めないと、そう思っている時、スマホに1本の電話が入る。オニキスからだ。

仕事を辞めた次の日、オニキスからは後日職を紹介すると言われたがフェルマは良い予感がしなかった。


あの変な飴をいきなり食わせてくるんだ、何か裏があっての事だろう。

そう思いながらスーツに着替え、前に連れていかれたアパートへ向かう。


アパートへ着くと地面に寝そべってるオニキスがいた…なぜ?そう思ってるとオニキスが

「なんか中途半端なものになりたいなあ…鉛筆の先…上?ぐらいにある消しゴムぐらいの中途半端に。」

そう発言していた。


…何を言っているだあの人は…確かにあれ消しづらいから普通の消しゴム買った方が早かったりするけど、そしてなんであそこに寝そべっているんだ。

そう思いつつ声をかける。


「オニキスさん?なぜそんな所で寝てるんですか?」


顔を覗き込みながら話しかける、よくよく見ると眠そうな顔をしていた。


「おはよう…そしておやすみ…」


そう言いながら目を瞑るオニキス


「いやいやいや、こんな所で寝ないでください!」


流石にここで寝ていたらダメだろうと思い腕を引っ張って起こす。


「眠い…けど案内はちゃんとしなきゃな…こっち…」

目を擦りながら立ち上がり、テントの方まで移動して行く。


テントをめくった先ー。

そこにはひとつの大きな空間が拡がっていた。

人が何人か住める程の広さで、住むための家具もしっかり用意されている。

これも超能力で作られたものなのか?

そう考えながらテントの中を見渡すと、ベットに直行しようとするオニキス

「って、オニキスさん!寝ないでください!」

「やだ!私は寝てから案内するんだ!」


オニキスの腕を引っ張り何とか止めようとしていると

「あ、やべ」

オニキスがそう呟くと同時に抜刀が如く1振りーーー


その先に切った物は

「…人形?」

フランス人形のようなものがそこにあった。ただそれはオニキスにより切られてしまった。

切られた人形は灰のように消えていく。


「…うるさい…一応 私ん家だから静かにしてよ。」

黒髪ツインテに眼帯でゴスロリの女性が人形を構えこちらを凝視してくる。


「いや、ごめんごめん。この時間帯だといっつも居ないからさ、今日は私がこいつを案内してやろうかと。」


そうオニキスが話すと眼帯の女性はこちらを睨みつける。


「ユルサナイ……ユルサナイ……」


自分でも分かる…明らかな殺意を向けられている事が…睨みつけられている間は鳥肌が止まらずにいた。

「まあクロユリが居れば案内は大丈夫だな!お詫びと仕事料としてほら、ペルツァの部屋の新しい合鍵。」


それを聞いた瞬間、クロユリと呼ばれた女性は食い気味に鍵を奪い取る。それと同時に

「どうぞ〜!こちらからお進み出来ます!」

先程のことが嘘かのような笑顔…


「……いや!まず鍵普通は渡しちゃダメでしょ!あとさらっと何で持ってるんですか!ペルツァさんが聞いたらなんて言うか。」


2人は笑顔でこちらに向き直し。2人揃って

「しーっ」と、言う顔を見せてくる。

…いや鍵もらった方は殺意混じってるなこれ?!そう思いながらもついて行き、テント内の真ん中に集まる。


「んじゃ、行くでー?『亜空間転送』!」

オニキスがそう言うと同時に、周りが全面ガラス面の筒に包まれた。

と思った瞬間、地面がエレベーターの様に下がっていく。だが、周りは真っ暗闇で天井に付いたライトだけが室内を照らす。


「あ、一応紹介しておかないとね。私は『クロユリ』お前には興味無いけど一応仕事だから名前を聞くわ。」

ものすごい態度だが…呑まれては行けない。

そう思い話し出す。

「あ、自分はフェルマータって言います。よろしくお願いします…」

名前を聞くと、ふーんとした顔をしたあと 体を外側へ向ける。


一瞬の沈黙の後、オニキスが口を開く。

「あー。それじゃ、いくつか説明しとこか、私らの事。」

オニキスがこちらを向き、話し始める。


「まず私らは異世界の管理者、世界によっては異世界警察だとか。異界冒険者だとか、世界によって呼ばれ方が違う。まあ少なくとも別の世界である異界、これ系の言葉は私らの肖像になる。」


オニキスはさらに話を進める。


「まあやってる事はめっちゃ分かりやすく言えば密入国するやつを取り締まって異世界に病気だとか生物を持ち込んで環境が変わらんようにする。それが仕事や。」


オニキスの話が終わると同時に天井に付いていたランプが点滅する。

「そろそろだ、すっごいのが見れるぞ〜!」

そう話すと同時に暗かった外がいきなり光り出すーーーー


「…!すっげえ!」

現代の町とファンタジーでよくある町が綺麗な融合をとげ、1都市として出来上がっていた。遠くには塔のような建造物があり、町中心としてこの街を囲んでいる。


「ようこそ、全ての異種族が集まる都市。『イリュージョンシティ』へ、私たち一同、あなたの入国を歓迎致します。」


オニキスはそう言いながら1枚のカードを取り出す。

「んで、ほいコレ。免許証風な見た目だけどここのパスポート兼身分証だから無くすんじゃないぞ?」


そう言われ渡されたのはフェルマの個人情報が書かれたものだった。

確かに免許証っぽい見た目だ。

そう話しているとクロユリが2人を呼ぶ。

「オニキス、タマフェール。そろそろ着くわよ。」

「いや待ってください!自分の名前はフェルマータです!」

流石にツッコむ。そうしたら次は

「…フェ…マル?」

「いやだから!フェ!ル!マー!タ!」

そう話しているとオニキスが間に入り、

「いや、ごめんね〜。クロユリはペルツァに関連すること以外覚えられないのよ。」


……ここの案内人だよな…?!それはかなり致命的じゃないのか?!さすがに動揺が隠しきれなかった。いや、隠してないが正しいかもしれない、それぐらいの人達だ。

「まあ後で頭に叩き込ませるから気にしないでくれ。」


…大丈夫なのか…そう不安視しながらこの世界を見渡す。


数分後。自分達を入れたカプセルはとある1軒の建物に入る。

建物の中にはスーツを着た人たちが何人もいた。警察官であろうか、それとも、先程の例えならば空港の職員さんに当たる人なのだろうか、その人たちが出迎えてくれた。


カプセルから出て、手荷物検査をされる。


「…っ!」


検査をしている時。少し距離があるところからとあるものが見えた。銃だ。銃に詳しくない自分でも分かる。仮に日本で持ち歩くとしたら大きいカバンが必要だろう。それこそギターケースとかゴルフバックみたいなものが、


「ほい、私の装備は申請通りやで〜。」


オニキスさんも服の下から武器を取り出しカゴの中に入れていく。しかも銃3丁とナイフだ。

自分は驚いていた。自分が驚いた姿を見てオニキスは話し始める


「あー…フェルマには言ってなかったな。この世界では超能力系の力を持つ奴らが多い都合上、武器は無制限で許可されてる。説明不足ですまんな。」


そう言う事なら納得がいく。確かに、武器がなければ戦うどころか身を守るどころの話じゃない。ただひとつ疑問が生まれた。


「ん?でももし隠し持ってたりとかしたらどうするんですか?ほら、そう言った人達が多いなら隠す系、ステルス迷彩みたいなのだってあるんですよね?」


簡単な問題を解くようにオニキスは話す。


「あっちに武器持ちとかここのチェックしてくれる人とかおるやろ?その人たちの一部は透視能力だとか嘘を見破る能力とか持ってるんよ。」


ものすごくスッキリする回答だ。確かにそう言う力があるならここで働くのに適してる。

そして検査を終え、自分達は外に出る。


「んじゃ、クロユリにバトンタッチするわ。ちょっと予定変更して寄り道するとこが出来たからな。」


オニキスはそう言うとタクシーを捕まえに行く。

……というよりこっちでもこうやって自分でもわかるものがあるんだと言う関心を受けている。凄いな異世界。

「それじゃあ、ここからは案内人、クロユリが担当します。フォルダさん。ついてきてください。」


……もはやツッコむのも諦めた。

そして、必要な事を淡々と説明されていった。この世界はどうやら全ての異世界の中心になるらしい。そのため、この世界は出入りが1番活発なのだとか。

今居る異世界転送所から、商店街、病院、そして最後にどうやらオニキスさんが手伝って欲しいと言う仕事場だ。


「で…このビルが職場…アパートの人間はここでみんな仕事してる…」


ビルを見渡す。その時上を見ると"異世界管理事務所"と書いてあった。


「でっか…でも仕事のことを考えればこのぐらいは全然有り得る…のか?」


「場所にもよる…ここは地下のほうがでかい…」


地下のほうがデカいって、このビルざっくり10階建てっぽいのにこれよりデカいのか…?!

いや、来る前に見たテントの中が外から見て何倍もデカかったりしたし不思議じゃないのか…


そうおもってると背後から知ってる人の声がする。


「おーい、お前ら。今日から仕事だったか?」


後ろを振り返る、やっぱりペルツァだ。


「あ、ペルツァさんお疲れ様です。」


視認すると同時に一礼。社会人として目上の人に挨拶はマナーだ。


「いや、そんなかしこまらなくていいよ。こっちがやりずれえ…ってか オニキスは?あいつが案内するって言ってたよな?」


「あいつならなにか用事があるって言ってどこか行っちゃいましたよ?」


即答、そして早口なクロユリ。少し驚いて振り返ると目を煌びやかせていた。


ああ、なるほど…ペルツァに関する事しか覚えられないってそう言う……


「予定なら終わらせてきたぞ〜。」


そう話しているとオニキスが山のような荷物を両手に抱え歩いてくる。


「オニキスさん、この荷物は…?」


片手には食べ物、もう片手には飲み物、そして両手にカバン達。


「これか?歓迎会用の色々と、仕事用に買ってきた武器とその他もろもろ、職場の奴らにはお前が来ることを伝えてるからな!」


そういう事で、歓迎会が行われるらしい。皆さんが、どう言う人達なのかも知りたいし、いい機会かもしれない。そう思いながら。


「なら、手伝わせてください。物を運ぶぐらいは。」


いい人達に、いい機会を貰った。

第2の人生だ。楽しまなきゃな。

そう思った。


第2話[完]


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2話終了時点


オニキス「今回は早めに書けたっぽいな……ってか、クロユリは一人でなにやってたの?」


クロユリ「オナニーしてた。あんたらの声で止めたからあん時めっちゃ腹が立ってたけどね。」


オニキス「そりゃすまん。」


フェルマ「そういえばあのエレベーターは二つの世界しか移動しないんですか?」


オニキス「説明めんどいから作者ー!」


作者「呼ぶな呼ぶな、せめて最大ここにいるの3人までにしてくれよ。説明するけど!」


オニキス「んじゃ、頼むわ。」


作者「はいはい…あのエレベーターは"異世界移動ポット"って言って、テレポート系と今回出て来た空間移動系の二つがあるんよ。距離次第だけどイリュージョンシティと通常世界は空間移動のほうが早いからそっちを使ったってことだな。」


フェルマ「ってとこは他にもあるんですね異世界。」


作者「一応無限にある。まあ多すぎて7割がパラレルワールドみたいな感じになってるけどな。」


オニキス「なんせ私が作者ベースで作られてるもんな。」


作者「それな。」


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