第1話 邂逅

ある日の出来事ー。


昼下がり、路地裏にスーツ姿の少年が1人…ー。


足元、少年の見目には不釣り合いな血溜まりが広がっている。


それは、数分前まで「人」であったろうものの成れの果てー。


「まーた、こんなにも"壊し"ちまって…」


そう言いながら、少年の元へと歩いてくる少女が1人ー…。


「あんただって、こんな感じで殺し回ってただろ。オニキス。」


呆れ口調で溜め息1つ…少年はオニキスと呼ばれる少女に少し悪態を吐(つ)く。


「ペルツァ…私はここまでお片付けが出来ないガキじゃねーよ。少しは整理してるわ。」


そう言いながら、ペルツァと呼ばれる少年に悪態を吐き返す。


「…で、あの人は?

巻き添え食らった奴か?」


たじろぎ、その場に座り込む男…。

少女は男にゆっくり近づくと、目の前に座り込み ポケットから何かを取り出す。


「よっ、これ食べるか?」


それは透明な箱に入ったキャンディだった。

状況とは裏腹に、優しく接する少女。


「ま、拒否権なんかねえんだがな!」


キャンディを取り出し、男の口に無理矢理ねじ込ませる。

それを口に含むと同時に視界は一瞬にして暗転する。


暗転した視界から目を覚ますと、先程の場所に倒れ込んでいた。

聞こえるのは先程の少年と少女の話し声。


「…あ、起きたみたいやぞ?」


先程の少女が気づく。


「おはよう。またこれ【キャンディ】食って寝るかい?」


サラリーマンはその問いに答える


「た、食べませんよ!」


その反応に少女は


「ふははは!そりゃそうだ!普通は食べたくないよな!」


そう笑っている少女の後ろから


「おい、"掃除"の邪魔になるからそろそろここを離れるぞ?こいつも連れてな。」


そう言いながら少年とは思えない力で男を持ち上げ連れていく。


「え…ちょ、え?!」


サラリーマンは困惑しながらも


「ちょ、ちょっと待って!警察は呼ばないのかい?!」


この状況に対してサラリーマンは質問をし始める。


「ああ、大丈夫よ。だって、私ら警察だもん。」


少女は警察バッジを取り出しながら質問を返す。


なにかの冗談としか思えない。

だが、バッジを取り出したり冷静なことを鑑みるに本当のことなのだろうと思い始める…。


「な…ならなんで離れるんだい?!」


もうひとつの疑問を投げかけると


「状況確保も済んだし、何よりこれ以上居るとここの仕事してくれるやつに支障をきたす恐れがある。それが理由だ。ま、ちゃんと確認取ってからだけどな。」


少年は慣れた口調で投げかけられた質問を淡々と返してくる。


「あと、一般人であるお前にはちゃんと質問することもあるしな。さっきのキャンディの事も含めて。」


もしや…普通の飴ではないんじゃないか!?

その事にハッと思い再度質問する。


「そ、そうだ!自分が食べたあれ…一体何だ?!食べた瞬間自分は気を失ったじゃないか!絶対普通のものではないじゃないか!?」


2人は真っ当な疑問だ。

そんな顔をしながら少女が質問を返す。


「あれは一般人用記憶処理キャンディだ。大体は1時間寝たら忘れるんだが、1部のやつはすぐ起きて何かしらの力…分かりやすくいえば超能力を手に入れる。」


少女は続けて話す。


「ちなみに肉体的にも精神的にも普通の人の何倍も強くなってるから、今のお前は"一般人"かどうかも怪しいかも、な。」


などと話しながら後部座席に放り込まれ、息つく暇もなく、車は急発進する。

発進させてすぐ、少女は話を切り出す。


「そういえば名前を言ってなかったな、私はオニキスだ。」


そう名前を言うと


「俺はペルツァ。」


そう少年が端的に名前を切り出す。


「自己紹介はこのぐらいにして色々聞くことはあるがまず名前と今の体調を聞こう。どんな感じだ?」


オニキスと名乗った少女は質問を始める。


「あ、はい。自分の名前はフェルマータです。体調は…特にこれと言って悪いところはないですね…」


体を隅々まで見る…が、外傷は特に見当たらないし、気分を害してる訳でもない。


「じゃ、まだ何かそういう力は見られないのか…ただ単に身体強化系か…ははっ、ちと楽しみやのぉ…!」


オニキスは目をキラキラさせながら車を飛ばす。

それと同時に名前に関して話を続ける


「あ、フェルマータ…んー、ちょっと長いから『マータ』とかでええか。」


そうオニキスは名前を略す。

フェルマータは苦笑いしながら


「いやなんでそこなんですか…よく『フェルマ』と 呼ばれてるのでそちらでお願いします。」


そう話し合っているとフェルマのスマホが鳴る


「あ、電話…ああ!まずい!」


スマホを見ると『上司』と書かれていた。

外回りから戻らないため電話をかけてきたのだろうと思い、恐る恐る電話に出る。


「おい!まだ戻ってこねえのか?!早く戻って仕事の報告しろや!」


上司の怒鳴り声だ、スピーカーにしなくとも前部座席の2人にすらその声は聞こえる。


「す、すみません…!今事件に巻き込まれてしまい…」


と返すも


「んな言い訳聞きたくない!早く戻ってこないと減給にするぞ!」


と、脅してくる。


「あ、ちょっと…!」


その脅しを聞いたペルツァがフェルマのスマホを無理矢理奪いスピーカーにし、話し始めた。


「もしもし?横で聞いてましたがかなりの言いぐさですね?それに今回の減給は不当な行為ですよね?」


ペルツァの発言に対し、


「あ?誰だお前!関係ないやつが入ってくるんじゃねえ!」


その怒号に対し、ペルツァは


「関係あります。現在事件に対して事情聴取を取っているペルツァと申します。」


そう名乗ると続け様に


「先程から聞こえている会話からして、常習犯だと判断させて頂きました。この事件が終わり次第、あなた方の会社も詳しく調査が必要です、ね?」


悪巧みをするような笑い声が聞こえながら電話先にいる人物に話す。


「へっ!やれる物ならやって見やがれ!」


そう言いながら乱雑に電話が切られてしまった。


「すまんな、無理矢理話しちまって。」


そう言うとスマホを返そうとするが。


「わ…わ…わ…」


フェルマは完全に意気消沈していた。


オニキスはそれを見ながら考え事をしつつ


「大丈夫か?ち〇かわみたいになってねえか?」


そう言い放つ。

だがペルツァにも違和感があった。


「警察に対してあんな態度取るか?普通。」


オニキスも同じように考えていたらしく


「そうそれ、なにか絶対隠し玉がある態度だった。」


そう話し合う2人、だがフェルマは


「…あああああ!もおええわ!今の会社辞めてやらあ!あの上司にも同僚にも散々なことばっか言われるし、そんならまだ路上で物乞いになった方がマシじゃあああああぁ!!!」


あ、吹っ切れた。そう2人は思いながら車を走らせる。


30分後…


「よーし、着いたで。」


2人の事務所に到着する。

一見は2階建てのアパートだ、目の前には空き地がある、が…その空き地には何故かテントが設置されている。


「あの…あれは…」

「ああ、テントは気にしないでくれ。ただ野宿してるやつがおるだけだから。」


そうオニキスは返す。

なぜ野宿…?そう思いながらもアパートの101に入り事情聴取を取る。


「はい、んじゃ色々確認してくな〜。」


オニキスは"事情聴取用"と書かれたノートを取りだし書き始める。


「改めて、オニキスだ。あの現場にいた人に見覚えは?」


「あ、はい。あの人達に全くもって見覚えはありません。」


と、そのように現場に関して様々なことを聞かれた。

現場にいた理由、状況。ペルツァと確認しながら辻褄が合うことを確認するーーー


30分程経った時、チャイムが鳴った。


「…ん?おいオニキス。お前通販で何か頼んでたか?」

「答えはノー。身に覚えがない、が…何が来たか察したから私出るわ。」


オニキスは立ち上がり。何も確認せず扉を開ける。


「はーい。どなたで…」


開けた瞬間オニキスの目の前に拳があった。


「危ないのお、全く。」


瞬間、すかさずオニキスが拳を掴む。

殴ってきた大男は驚きながらも、掴まれた腕を引き剥がそうとする…が、ビクともしない。それどころか、剥がれる気配すらない。


「全く…若いやつはいっつもせっかちだよなあ…ほれ。」


そう言うと掴んでいた手を離す。

同時に大男は引っ張っていた勢いで後ろに転んで行ってしまう。


「おい。とりあえず暴行未遂やお前。」


そう言って手錠を取り出そうとした時。


「おい、何やってんだ筋肉ダルマ。」


きっちりとしたスーツ姿の男が割り込む。


「…あんたは?」


オニキスがそう聞くと男は穏やかな口調で名刺を取りだし、名乗り始めた。


「初めまして。私、株式会社"ブラックノワールネオ"の黒田黒部と申し上げます。」


そう言うと1枚の名刺を渡す、オニキスは受け取り確認する。


「会社の人…おーいフェルマ!これお前の仕事してたとこか〜?」


と、1度中にいるフェルマに呼びかけようとすると。


「あの…すみません。フェルマータを返してもらってよろしいでしょうか?」


一瞬、穏やかな声の裏には何かある様な気がする…そんな物を感じ取りながら


「ダメだ。あんたらには労働基準法違反込み込みで色んな容疑があるからな。」


そう言いながら手錠を取りだし、掛けようとした瞬間 黒田は高速でオニキスの顔を掴み、投げつけようとする。


「…ふーん。お前、″そっち″側なのな。」


そう言うと同時に、オニキスは黒田をぶん殴り、そのまま地面に叩き付ける。


「…お前、違法入界(にゅうかい)者だろ。異世界異動者は17京人記憶してるが、お前の事は何も記憶に無い。」


そのまま。黒田は叩き付けられながら気を失ってしまう。一瞬の出来後だった。

フェルマには何が起きたのかさっぱりだった。

だが。


「?!オニキスさん後ろ!」


気がつくとオニキスの後ろには先程の大男が立っており、思いっ切りオニキスを殴り倒そうとしていた。


「…芸が無いなあ お前。」


と、言い放つと同時に大男は横転し、黒田の上に倒れ込んだ。


「よし、おめえら。″スキル使用法違反″と″異世界不法入界″《いせかいふほうにゅうかい》で逮捕な。」


聞いたことない罪状に戸惑うフェルマ。

倒れ込んだ2人に手錠掛けていくオニキス。

いつの間にか連絡を取っていたペルツァ。

この3人の出会いによる世界の運命の歯車は今、少しづつ狂い始めた…


第1話[完]


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おまけ話


オニキス「よお作者…プロローグ出してから何日立った…?」


作者「…大体4ヶ月ですね…」


オニキス「4ヶ月ですね…じゃねえよ?!お前ほとんど遊び呆けてたじゃねえか!なんかたまにメインキャラの設定書いてたらしいが?それでもお前1話ぐらいちゃんと書けよ?!」


作者「いやー…その…納得行くストーリーが全然で…なんか1話が終わったぐらいには2話の構想おおよそ出来てて…この会話書いてる時には割とちゃんと書けそうなんですが…」


オニキス「なら…次は早めに書くんだよな?」


作者「…善処します。」


フェルマ「あの…結局あのキャンディって何だったんですかね?」


作者「ああ、あれ正式名称が"一般人記憶処理用キャンディ"って言う名前そのままのやつで、大体のやつは1時間ぐらい寝るんだけどたまに フェルマみたいなのがいる。だけどさらに低確率で死ぬ。」


オニキス「食わせた本人が言うのもあれだけど怖。」

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