@yayoi_yui

第1話

眠れなくなった。


自分のことが嫌いで嫌いでたまらない。


八方美人なところ。弱みを見せられないところ。不安定なところ。約束を守れないところ。


嫌いだ、嫌いだ、嫌いだ。


過去のトラウマが蘇ってくる。


寝る数瞬前、どうしても一人で寝ている自分と他人を比べたくなる。


どうして俺は一人なんだ。どうして俺はこんなことをしている。


一度頭を過ってしまうと、どうしても歯止めが利かなくなる、


そうなると朝までコースだ。


過呼吸で目が覚めることもある。


夢の中で理想をいまだに思い浮かべる自分が嫌になって、ハッと目が覚める。


生きたい。


そういう言葉に救われ、殺された。


自分はまだ生きている、という事実が耐え難いほど面白くなり、それが幸せで笑い転げるときがある。


自分はまだ生きている、どうしてまだ生きているんだ。とっくに腐り落ちて終わった人生なのに、どうしてまだ、と思う時がある。


生きているのか死んでいるのかわからなくて、足元が歪む。


正立できているのか、それとも地面に転がっているのか、判断ができないほどの眩暈。


それが襲ってきては引いていく。


後ろ向きに歩いているような錯覚。


先は見えないのに、早く進めと背中を押されている。


拠り所が無くなった人間とはあまりに脆いものなのだと達観する。


吐瀉物は奇跡的にゴミ箱の中に納まり、悪臭を漂わせている。きっと、金曜の朝には捨てられるだろう。

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