借りたものはちゃんと返すべき

さっそく商店街に行こうと思ったら、どうやら隣町の商店街らしい。

縄飛が住んでいるのもその辺りのようだ。

だから、僕から金を借りたのか…。

「そうだ、縄飛。ちゃんと金返せよ」

「少しぐらいならいいだろ。1000円未満で返せとか言うとケチだと思われるよ」

こいつ…舐めてるのか…?

そもそもこちらとしては、大事な生活費なのだ。

いくら依頼金と臨時収入により持ってるとはいえ、いつかは尽きるだろう。

1000円未満だろうが以上だろうが返してもらわないと困る。

僕がそれを説明しようとすると、

「縄飛さん、借りたものはきちんと返さなきゃ」

風切がそう言うと、縄飛は少し俯く。

「それもそうだね…。返せるうちに返したほうがいいだろうしね…」

縄飛は財布を取り出し、お金を出そうとするが、そこで彼女の動きは止まる。

返してくれると思ったのにまだ渋ってるのか…?

縄飛は財布をポケットにしまい、

「そうだね…。駅の代金は僕が払うよ」

「まぁ…それでチャラにしてやってもいいが…」

「オーケー、決まりだね。じゃあそろそろ周りの視線もウザいし行こうか」

そのまま席を立つ縄飛。

喫茶店を出ようとすると立ち止まり、

「そうそう、加奈子ちゃん。僕のことは呼び捨てで呼んでもらえるかい?」

「え、あ、うん。わかったよ、縄飛」

「よし、気を取り直して行こう。ちなみに次の電車は1分後だよ」

待ち合わせの場所が駅前にした理由はそれか。

さて、依頼開始といこう。


隣町の商店街に着きはしたが、放課後に出発したということもあって、空には夕日が浮かんでいた。

「ここで何か収穫があったとしても、時間的に明日に引き継ぐ形になるな…」

僕がそう言うと、縄飛が不思議そうな顔をする。

「なんで?まだ時間はあるじゃん」

「明日も平日だぞ?当然、学校あるに決まってるだろ」

「学校…」

おい…まさかとは思うが…

「縄飛は学校行ってないの?」

僕の代わりに風切が聞く。

「いや、たまには行くよ。でも、行ったところで何もないからね。てか、聞いた話だと狐はちょくちょくサボってるらしいじゃん」

「僕の場合は依頼があるからだよ…」

「ふーん…、僕の場合は……」

そこで縄飛の声は止まる。

その表情は心なしか戸惑っている。

しかし、すぐ元の表情に戻り、

「時間ないんだよね?それじゃあ早く行こ!」

そう言って縄飛は商店街に入る。

僕と風切は突然、話が変えられたことに違和感を持ちながら後に続く。


商店街は夕方ということもあり、人が多くいた。

手分けして、縄飛の姉について聞いてみるが情報は得られない。

20分後、3人で集まるが、他の二人も情報は得られなかったようだ。

「やっぱり、誰も知らないようだな…」

そうなってくると、縄飛の元ボスは嘘の情報を縄飛に教えた…?

でも、その場合のメリットはなんだ?

考えるが全然わからない。

「まだだよ。僕は手がかりが手に入るまで諦めない」

「あのなぁ、これ以上は無理だと思うぞ?他に何か手がかりはないのか?」

「手がかりって?」

「縄飛の姉が行きそうなとことかだよ」

「それはもう探した。他に手がかりになりそうなものはもう…」

縄飛は言葉を区切り、僕の前から姿を消す。

その瞬間、後ろでうめき声が聞こえる。

振り返ると、縄飛が男の首にロープを絞め付けていた。

「何してるんだ!」

「こいつが殺気を向けてきたからね。ほら、ナイフも持ってる」

首を絞められている男の横には、確かにナイフが転がっていた。

「それで?僕達になんの用?」

縄飛が聞くと男は苦しそうにしながら、

「ひ…人違いだ…。は、離してくれ…!」

「人違い?」

縄飛は首を傾げるが、僕はなんとなく理解した。

「縄飛!今すぐ、そのロープを離せ!」

「なんで?」

「いいから早くしろ!」

僕が怒鳴ると、縄飛は仕方なさそうにロープを離す。

解放された男は息を整える。

「縄飛、お前の姉は暗殺者か?」

「そうだけど…」

となると、この男は…、

「おい、あんた。質問していいか?」

「な、なんでも話す!だから、命だけは…」

「わかった。あんたはなんでこいつに、縄飛に殺意を向けていた?」

「それは、ひ、人違いなんだって!」

「なるほど…。あんたはこいつの姉に何をされたんだ?」

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