縄飛柘榴…僕の心の寄拠り所

「そうか…、あいつの妹なのか…。だから、こんなに似ているのか…。わかったよ、なんで襲おうとしたか話すよ。一ヶ月ほど前だったか、この辺りを友達と歩いてると、いい女がいたんだよ。お、おい!そんな殺気立つなよ!オレ達はなにもしてないんだから!…いや、ナンパはしたんだ。そしたら、あんたの姉はオレの友達を投げ飛ばしやがった。その後もひどい目にあわされてな、結果オレの友達は意識不明の重体だよ!警察に話しても、捜索してくれないしよ…。だから、オレは復讐しようとしていたんだ。そんなところにあの女に似たあんたが来たもんでな。思わす殺気立っちまって。悪かったよ」


男の話を聞いた縄飛の表情は不安げだった。

「ねえ、あなたはお姉ちゃんがどこに行ったかわかる!?」

縄飛は男の胸を掴み、身体を揺らす。

「お、落ち着いてくれ!話すから!」

「縄飛、大事な情報元なんだぞ。あまり無礼を働かないほうがいい」

縄飛は手を離す。

だが、その焦る気持ちはわかる。

自分の大切な人が急にいなくなったのだから。

「あんたの姉は、オレ達を投げ飛ばした後、神社に行くって呟いていたぞ」

「神社…?どこの神社なの?」

「正上神社だよ」


男から情報を得た後、僕達はひとまず解散することにした。

僕と風切は電車に乗って帰宅し、縄飛はそのまま家に帰ることに。

帰宅途中、僕は様々なことを考えていた。

この依頼における複数の違和感。

その正体は掴めないが、また一つ追加された。

縄飛の元ボスは商店街で目撃されたとの情報を持っていた。

しかし、縄飛柘榴を見たのはあの男とその友人だけ。

つまり、縄飛の元ボスはあの男とコンタクトをとったということになる。

そこで疑問になるのが、なぜ男は縄飛柘榴のことを話してしまったのか。

男は縄飛柘榴に復讐する気でいた。

であれば、復讐対象のことをわざわざ他人に言うであろうか?

ただ、推測ばかりで確信には至らない。

そんなふうに考えていると、家に着く。

リビングで九尾と色々話した後、風呂に入り明日の準備をする。

なぜだか、今日は疲れた…。

もう、寝るとしよう…。


次の日の放課後、またしてもスマホに連絡が届く。

風切を呼ぶが、彼女は一旦家に帰るとのこと。

「ごめんね。すぐ行くから!」

そう言うなり、彼女は走って教室を出た。

僕はスマホに届いた、メッセージを読む。

「商店街に集合か…」

僕は電車の時間を調べながら、駅に向かった。


結局、電車の時間には余裕があり、風切も追いついた。

ただ、風切が持ってしたカバンの中に何かいる。

「風切…それ、カマチか?」

「うん。カマチもついてきたいって言ってて…」

「当然だ。カナコを守るのは僕の役目だからな」

カバンの中から声がする。

相変わらず、風切に懐いているようだ。

電車に乗って隣町へ。

昨日来た商店街に着くと、縄飛が待っていた。

「学校、お疲れ。さ、早く行こ」

そう言うなり、さっさと歩き出す。

急ぐ気持ちは分かるが、もう少し僕達のことも考えてほしい。

「僕ね、親がいないんだ。僕とお姉ちゃんが幼い時に殺されちゃって」

しばらく歩いていると、縄飛がそう話した。

「ずっと親の仇をとる一心で暗殺者になり、ついに殺すことができたんだけどね、そこで気づいたの。僕達には暗殺者としての生きる以外方法がないってことに。

「そんな中でもお姉ちゃんは僕の心の拠り所だったんだ。だけどお姉ちゃんも居なくなって僕は一人になった…。だからこそ、これを最後の暗殺にしたい。狐、君に負けたら僕は真っ当に生きるよう頑張るよ。だから、君も本気で戦ってくれ」

その言葉はまるで、依頼後のことを言っているようだった。

ここでまたしても生じる違和感。

いや、今の話を聞き僕は大々理解したのだろう。

ならば、縄飛の望み通り僕は全力で戦うことにしよう。


神社に着き、縄飛が鳥居をくぐる。

僕はそれに続き、風切も来ようとするが、彼女は見えない何かにぶつかる。

「え?な、なに?これ?」

戸惑う風切。

あくまで戦うのは、僕だけと言うことか。

「落ち着いてるね。その様子だとわかってるってことかな」

「あぁ、一ヶ月前に失踪したと聞いた時から考えていたが、そのとおりだとはな」

「うん、正解だよ。お姉ちゃんは殺されたんだ」

「やっぱりか…あの最悪な事件…」

それは僕にも深く関係し、未だに警察が調査を続ける事件。

「女子高生連続殺人事件の被害者なんだな」

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