第6話 かいわ
理人は、ソファに寝転びながらスマホをクルクル回していた。
犯人からの、新しいメッセージが表示されている。
「Rihito, let’s talk. Just you and me.」
「……話そう、か」
理人は、にやっと笑った。
「やっと“声”を聞かせてくれるんだね。
いいよ、たっぷり“会話”してあげる」
⸻
警察署。
理人は、デスクで椅子をぐるぐる回していた。
片手には、缶コーヒー。もう片方には、犯人からのメッセージ。
片桐が、じっと理人を見つめて言った。
「お前、行く気じゃないよな?」
理人はスマホをひらひらと振りながら笑う。
「行くよ?だって、“話そう”って誘われたんだよ?
これ、断ったら悪いでしょ~?」
「はぁ……お前、本気で“行く”つもりなのか?」
「もちろん!」
「じゃあ――俺たちも、ついていく。
問題ないな?」
理人は、ちょっと驚いたように笑った。
「さすが片桐さん、頼りになる~。
いいよ、チーム戦にしようか」
⸻
指定された場所は、廃駅のホーム。
理人は、一人でそこに立っていた。
風に揺れる雑草、夜の冷たい空気。
「さて、と。何が出るかな~」
足元に、何かが転がっていた。
拾い上げたそれは――カセットテープ。
手書きの文字で、こう書かれている。
「Rihito e」
「カセット?マジで?レトロ趣味だなぁ…」
理人は笑いながらも、懐からポータブルプレイヤーを取り出す。
「一応、持っててよかった~。備えあればなんとやら、だね」
⸻
再生ボタンを押すと、ノイズ混じりの音。
そして、機械的で艶めいた女性の声が響く。
「こんにちは、リヒトくん。
こうしてあなたとお話できることを、うれしく思います」
理人は口元をほころばせる。
「……AI? いいね、その感じ。
“本当の声”は、まだ秘密ってこと?」
音声は、淡々と続く。
「私は、あなたのことを、ずっと見てきました。
あなたが壊れていく姿を、楽しみにしています」
ノイズが混ざり、声が少し歪む。
「次の作品は、あなたのためだけのものです。
心して受け取ってくださいね」
そして、最後に。
「あなたは、特別。
あなたと私だけの、“最高の会話”を――楽しみにしています」
プツリ、と音が切れた。
⸻
理人は、カセットを止めて空を仰いだ。
「ふふっ……凝ってるなぁ。
そんなに“話したい”なら、もっとちゃんと聞かせてよ」
手にしたカセットをくるくる回しながら、理人はにやりと笑う。
「じゃあ、僕からも――
“特別な返事”、あげないとね?」
⸻
■第6話「かいわ」 完!!!
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