第7話 へんじ


理人は、自室で指をトントンとリズムよく叩いていた。

机の上には、犯人からのカセットテープ。

そして、その横には、新しいスマホが一台。


 


「さて――僕の“返事”、どうしようかなぁ」


 


カセットから流れたあのAIの声。

「あなたは特別」「次の作品はあなたのため」。

その言葉が、ずっと頭の中でリピートしている。


 


「……じゃあ、僕も特別に返さなきゃね」


 


理人はスマホを手に取り、笑った。


 


「君の好きそうな“返事”、送ってあげるよ」



警察署。

理人は、珍しくパソコンの前で真面目な顔をしていた。

片桐が、背後から覗き込む。


 


「お前、今日はなんだよ。真面目か?」


 


「いや~、犯人に“お返事”しようと思ってさ。

僕からも、プレゼント返してあげないと」


 


片桐は眉をひそめる。


 


「……どんな“返事”だよ」


 


理人は、ニッと笑った。


 


「ちょっとした“動画”をね。

僕が今まで何を見てきたか、何を感じてるか――

全部、まとめて送ってあげるの」


 


「お前、それ……本気か?」


 


「本気もなにも、“へんじ”は大事でしょ?」



その夜。

理人は、完成させた動画を、匿名のクラウドにアップした。

そして、犯人にリンクを送る。


 


「見てくれた?これは、君への“返事”だよ」


 


しばらくして、返信が届いた。


 


「Beautiful. I’m so happy, Rihito.

Next, I’ll show you something just for you.

Get ready.」


 


「ふふっ……やっぱり、通じたね」



翌朝。

新たな事件が起きた。


 


――被害者:春川 蓮の担任教師。


 


現場には、あの“AI音声”が流されていた。


 


「リヒトくん。あなたの返事、受け取りました。

今度は、私の番です」


 


理人は、音声を聞きながら、片桐に言った。


 


「……僕の返事、気に入ってもらえたみたい。

でも、ちょっと“ズレて”きたかもね」


 


片桐は、真剣な目で理人を見る。


 


「お前、そろそろやばいぞ。

相手はもう“誰でもいい”んじゃねぇか?

お前の周り、片っ端から狙ってきてる」


 


理人は、少しだけ眉をひそめた。


 


「……だったら、

僕の“本気”も、そろそろ見せてあげないとね」



■第7話「へんじ」 完!!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る