目の前で僕が死んでいる

目の前で僕が死んでいる。

床に倒れた僕の身体は、もう動かない。

でも、ベッドの上で、彼女が指を動かした。

小さく、ほんの少しだけ。

それを見て、僕は笑った。

ああ、これでよかったんだ。

とても良い気分だ。

彼女が生きていてくれるなら。

彼女の指が動くなら。

彼女がまた歩けるなら。

それで、いい。

「どうして……」

彼女の声が聞こえる。

「どうして、こんなこと……!」

彼女は泣いているのだろうか。

ごめんね。

でも、君も同じことをしたかったんでしょう?

あの時の同級生に。僕の愛した植物に。

今度は、僕が君にそうしたんだ。

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等価交換 北宮世都 @setokitamiya

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