第39話 幼馴染みのキスの味

《午後の体育授業》


 あの衝撃が頭から離れなかった。


「ちょっと! 士……」


 あんな可愛い娘からの積極的なキス。


「聞いてるの? 士郎!」


 そして、全力で甘えられたという愉悦感。


「おいっ! こら~、士郎ー!」

「……はっ?! あれ? 俺はいったい何を?!」

「何をって。男女ペアのダンスの練習授業中でしょう? それでペアの相手はこの愛らしい凪ちゃんよ。どう嬉しい?」

「ん? ああ、凄く嬉しい……」

「へ? そ、そう。それ良かった……」


 ん? 俺、今、とんでもない事を言わなかったか?……いや。昼休みの小鳥遊さんとの絡みで色々と頭がパンクしちまってるな、俺。


「ダンスの授業ねぇ~、それで具体的に何やんだっけ?」

「さっき先生が踊ってたのを動画を見ながら練習して、踊れる様になれって説明受けたでしょう? 本当に聴いてなかったの?」


 小鳥遊たかなしさんの事で頭がいっぱいでそれどころじゃなかったなんて言ったら、張り倒されそうだな。


「聴いてなかったな。上の空だった……それで男子が1人に女子が2人のペアで練習するって事か?」

「はい? 男女ペアって言ってるでしょう。何、馬鹿な事を言ってるのよ」

「だけど凪の隣に彩希あきさんが居るぞ」


 俺は右隣に居る。前髪で顔を隠さなくなった彩希あき光莉ひかりさんの方を見つめた


「は? そんな分けないじゃな……光莉ちゃん?! いつの間に?」

「………相方の男の子が私を見るなりトイレに行くと行って、そのまま帰って来ないんです。どうしましょう。桐生君」


 素顔が超美人の彩希さんが泣きそうな目で俺を見てくる。


 しかし、彩希さんの素顔知ったクラスメイト達は彩希さんの美人さに度肝を抜かれただろうな……トイレに行った男子め。トイレで何してんだかな。


「とりあえず。彩希さんのペアの男子が戻って来るまで、3人でダンスの練習をしてるか。なぁ、凪」

「……こんな伏兵が居るなんて聞いてない。聞いてない~、それにこんなドスケベボディーに美人顔~、勝てる気しないよ~」

「凪? 話、人の聞いてるか?」

「はっ! き、聞いてるわよ。さっきから私の話を聞かない士郎と一緒にしないで!」


 おっと。これは1本取られた。確かに今の俺は人の話をまともに聞ける状態じゃないかもな。



〖ワンツー! ワンツー!〗


「わ、わんつー、わんつー!」

「ワンツー、ワンツー!」


 ぎこちない動きで踊る彩希さんに対し、凪は動画のダンスを数回見ただけで、ダンサーの動きをトレースし、なんとなく踊れる形になってきている。


 こういう時、凪の何かを覚える早さには旋律せんりつする。物覚えがマジで早いんだよな。


 俺? 俺はさっき1回動画を見て踊れる様になり、先生に見せたら合格をもらったからボーッとしている。


「くうぅぅ! きついですー! 凪さ~ん」

「普段から引き込もってるか士郎のストーカーをしてるからでしょう。光莉ちゃん」

「酷いですー! 凪さんだって桐生君の裸の写真いっぱい私の部屋から持ってたじゃないですかあぁ!!」


 流石、幼馴染みツインズ。会話に遠慮がない。それと彩希さんが、とんでもない事を発言したのは俺の気のせいだろうか?


「そ、それは色々と使う用途があるから仕方なくもらっただけだもん。夜のあれとかね。ていうか士郎の奴~、事前にダンスの予習してるとかズルすぎでしょう。このフライング男」

「ひー、ひー……桐生君。疲れました~、少し休憩しましょう~」

「何がズルいか。この学校は1年間の授業スケジュールは全て完璧に決められてる。それに対して事前に準備・・しておけば、後は最低最小限の労力で学園生活を過ごせるだろうが」

「言うはやすおこなうはやすしってことわざの典型じゃない。このチートは」

「何だと? この天才が。俺はお前に追い付く為に日頃から努力してるだけたっての……」


 真の天才が何を言ってんだかな。俺が影でどれだけ頑張っていると思ってんだか。


 しかし、あれだな。2人共、凄い揺れているな。あれが


「スカイツリー、スカイツリー」

「スイカゲーム、スイカゲームー!」


 ダンスの謎の掛け声と共に美少女2人のあれが揺れている。


 幼少の頃はあんなにつつましかった2人のあれも。彩希さんはスイカに、凪はメロンの様に成長した。


 凪に至っては数日前にまた大きくなったとか、ぼやいていたし。これからまた成長するんだろうか?


「……凪さん。桐生君の目がイヤらしいです」

「わー、本当。最低~、士郎! どこを見てるのよ! 目潰しするわよ!」

「ん? ああ、凪と彩希さんのの可愛い姿を見てた。幼馴染み達がこんなに可愛くなるなんてな。時の流れは最高だな」


 こんだけの美少女達に育つとは、いや昔から2人共可愛いかったけどさ。


「私達が……」

「可愛い……士郎!」

「ん? 何だ。凪」


 凪はダンスを止めて俺の右手を掴んで来た。


 「………今夜。アンタどうせ暇なんでしょう?」

「いや。まぁ、暇だけど突然何だよ……」

「今夜。光莉ちゃんが家に寝泊まりに来るからアンタも遊びに来なさいよ……可愛い私と光莉ちゃんの成長した姿を見たいアンタに、もっと成長した所を見せてあげるからさ」

「は、はい。私も桐生君に色々と見せてあげたいです……つっ////」


 凪と彩希さんはそう言って、赤面しながら何故かもだえていた。


 俺は今夜。幼馴染み2人から何を見せられるというんだ? 幼稚園頃のお遊戯会の鑑賞会でもするのか?



 



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