第38話 フリーになった柊さんのその後

小鳥遊たかなしさん。好きです! 僕と付き合って下さい! 一生大切にします」

「ごめんなさい。私、好きな人がいるの~」


「ずっと好きでした! 俺と付き合ってくれ。小鳥遊!」

「ごめんなさい。先輩、私、心に決めた人がいるんです」


「わ、私、昔から小鳥遊さんに憧れていて……それがいつの間に恋心に……付き合って下さい!」

「……ごめんなさい。貴女の気持ちは凄く嬉しいけど。私、好きな男の子がいるんです」


《昼休み 空き教室》


 俺は現在、空き教室で優雅に昼飯を食べている。いつも一緒に昼食を共にしている悪友共は、他校の女の子との浮気が原因で元カノ達に絶賛しばかれ中である。


 その為、巻き添えを食らわない為にも。ぼっち飯を食べているところに……


「桐生君と1ヶ月別れる事になってから、もうずっと告白されてるの」

「そうか。俺と別れてから大変なんだ。小鳥遊たかなしさんは頑張れ……あぅ!」


 小鳥遊たかなしさんめ。何故、いきなり俺の脳天にチャップを喰らわせきおったぞ。


「私の話ちゃんと聞いてくれているのかな? 彼氏君!」

「元な。元カレ。それも偽造恋心関係の……あぅ!」


 またチョップしてきおった。たくっ! 人が久しぶりの1人の時間を楽しんでいる時に、泣きそうな顔で空き教室に入って来るとは。忙しい元カノさんだな。


「……なんでそんなにドライなの? 付き合って頃はもっと私に優しかったよね? ね?」

「俺は元々、こういう性格なの。凪に対してもそうだろう。小鳥遊たかなしさんともだいぶ仲良くなったから、自分の素を出しているだけだって」

「そ、そんな。私と深い仲になったなんって……照れちゃうよ。士郎くん」


 小鳥遊たかなしさん自分の顔に両手を当てて、キャアア!!っとか叫びながら、赤面している。


 以前はこんな姿でも可愛いと思えていたんだがな。


「時の流れは残酷だな。それに最近は家でも一緒に居るせいか。最早もはや、家族とすら誤認しちまうし」

「わ、私と士郎くんが家族?……フォアアア//////」


 相変わらず。表情変化のバリエーションが豊富な娘だな。


「モテモテで良いじゃないか。試しに俺の時みたいに誰かと付き合ってみるとか……」

「絶対に嫌! それだけは駄目!」


 超真剣な顔で俺をにらみつける小鳥遊さん。


「……さいで。」

「さいでぇ!……ねえ。もう寄り戻そうよぉー! 私、また士郎くんの膝でお人形さんみたいに座りたい! お姫様抱っこだってしてもらいのおぉ!」


 小鳥遊さん。が俺の膝に無理矢理座り。暴れ始めた。俺の素がドライなのに対して、小鳥遊さんは心を開いた相手にはかなりのわがままになる傾向があるらしい。


「いや。それはもう無理だろう。俺に告白してくれたあの2人にも悪いしな。その為の1ヶ月のお別れだろう?」


 そう。そして、この1ヶ月で俺は凪を振り向かせる為にいろいな作戦を実行していかなければならない。どんな障害が立ちはだかろうともだ。


「……今、なーちゃんの事を考えてたでしょう?」

「何で分かった? 君。エスパー……がぁ?」

 

 小鳥遊さんお得意の俺の両頬を両手で掴んで引っ張るをやられている。


「分かるに決まってるでしょう! 私は士郎くんの元カノなんだから。士郎くんの些細な変化だって気づけるよ」

「……何か怖いなそれ。小鳥遊さん。俺のストーカ……があぁぁ?!」


 俺の両頬をおもいっきり引っ張る小鳥遊さん。


「一緒に同棲してるんだから。分かるのぉ!」

「がはぁ……凛と萌萌も一緒に暮らしてるだから。同棲じゃないだろう。勝手に脳内変換するな。柊」

「ムカッ……何でそんな意地悪な言い方で言うの? 付き合ってた頃はもっと優しかったのにいぃ!!」

「痛いだろう! さっさと離れろ! わがまま娘!」

「なら。もっと抱き付く~! 離れたくないの~」


 柊のやつ。両手を両足を使って俺の腰に張り付いて離れようとしない。む、胸が当たってるんだよ。それに顔が近いってのぉ!


「わがまま言うな。君は1ヶ月も我慢できない女の子なのか?」

「当たり前でしょう! 私はわがままなの! だからこうするんだから……」

「はっ? ちょっ! 柊、君……」


 意表いひょうを突くとはまさにこの事だった。


 柊は、完全に油断仕切っていた俺の唇にキスをし、更にその奥まで侵入して来たのだ。


 絡み合う侵入者と俺のあれが重なりあった。


「ぷはぁー! 柊。君……」

「……一線……超えちゃったね。彼氏君……初めての感覚だったけど。私、覚えちゃたから。次はもっと上手にやるから。覚悟してね。ニヒッ!」


 柊はそう言って俺の胸の中に顔をうずめた。


 その時、俺の心臓はドクンッ!ドクンッ!っと強く高鳴っていた。そんな状況を彼女に知られてしまったかも俺は教室に戻ってから気がついた。

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