第21話

《運命の一戦・Cronoz Red戦 当日》


 ――ついに、対戦時刻がやってきた。

 マッチングロビーに表示される相手チームの情報は、得意戦法「完全奇襲型」「開幕3分間全力攻撃」。

 画面の向こうで、Cronoz Red の三人が黙々と準備をしている様子が見える。


 玲央はコントローラーを握りしめ、ふたりに声をかけた。


「――行くぞ。過去を断ち切る一撃を」


 未来が静かに頷き、陽斗が拳を握りしめる。


「オレたち、ここで勝つっす!」



■Round 1:罠の開幕奇襲


マップ:廃工場「Iron Ruins」

勝利条件:制圧率80%維持30秒


 試合開始と同時に、Cronoz Red は前線を捨てたかのように全員が左右に散開。

 「捨て札」を見せて、玲央たちを中央に誘い込む作戦だ。


 玲央は一瞬うろたえたが、すぐに声を上げる。


「中央は罠だ!分散してプレッシャーかけるぞ!」


 ――しかし、その声もむなしく、予想を超えた一手が飛んできた。


《Crono_Ace》:

「行くぞ、一気に――“Red Barrage”!!」


 鉄粉が舞い散る大振りの範囲攻撃。未来の回復ラインは瓦解し、陽斗はジャンプ回避に失敗。

 玲央も剣を構えた瞬間、背後から飛んできたグレネードで撤退を余儀なくされる。


 わずか15秒で制圧率は20%に急降下。

 結果、Round 1 は 0–1 で Cronoz Red の勝利となった。



■インターバル:心の揺れ


 ロビーに戻った3人の表情は硬い。

 未来が小さく息を吐く。


「ひどい罠だった……完全に誘導されてた」


 陽斗は手のひらを見つめながら言う。


「オレ、見事に釣られました……でも、同じ手にはもう乗らないっす」


 玲央は黙ってモニターを見つめ、すぐに切り替えの言葉を口にした。


「Round 2 はこっちから仕掛ける。罠は逆手に取る――“Moonlight Raid” で行くぞ」



■Round 2:罠を破る逆襲


作戦名:Moonlight Raid

• 玲央:あえて扮装的に中盤まで後退し、相手の奇襲を誘発

• 未来:ワープ支援で一気に陽斗を救出

• 陽斗:裏取りから制圧ポイントへ単独突入


 Round 2 が始まると、玲央はあえて中央を捨て、左右へ迂回。

 Cronoz Red は「また釣られたか」と思いきや――


《Crono_Ace》:

「来やがったな……一網打尽、“Red Net”!!」


 再び範囲罠が爆発。しかし、玲央はその瞬間を逆手に取る。


「未来、今だ!」


 未来の支援エフェクトが闇を切り裂き、陽斗が天井裏から飛び込み一撃で敵アサルトを撃破。

 残るふたりも、それぞれ支援と囮をこなしながら連携を見せる。


《Crono_Zero》:

「くっ……やるな、Vanish!」


 2人の連携で制圧率を一気に80%へ回復し、そのまま30秒を維持。

 Round 2 は 1–1 の同点で終わった。



■訣別の瞬間


 ラウンド間の短い待ち時間。

 チャット欄に、Cronoz Red リーダー“Crono_Ace”からの一文が流れる。


《Crono_Ace》:

「初めて見る戦術だ。だが――次が本命だろう?」


 その言葉に、玲央は震える声で返す。


《Reo_Kamiya》:

「次こそ、過去を断ち切る!」


 熱い決意が3人の胸を燃やす。

 次が最後の勝負――運命の Round 3 が幕を開ける。

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