第20話

《Cronoz Red:戦術解析》


玲央たちは、チーム“Cronoz Red”のリプレイ映像を徹底的に分析する。


「このチーム……マジでヤバいっすね。開幕から3分間は“完全奇襲型”で来る」


陽斗が顔をしかめながら言う。


「しかも、構成が変則すぎる。アサルト2枚、サポートゼロの純火力型。普通にやってたらまず勝てない」


未来も不安そうに頷いた。


玲央は映像を巻き戻し、同じ場面を繰り返し再生していた。


「なるほど……序盤を“捨ててる”ように見せて、本当は“狩り場”を用意してるんだ」


「どういう意味?」


「視線誘導だよ。視聴者にも相手チームにも、“わざと”ミスを見せて、罠に誘い込む」


未来の目が驚きに見開かれる。


「……戦術っていうより、“心理戦”なんだね」



《玲央の特訓》


玲央は夜遅くまで、コンボ練習に没頭していた。

新技【月影返し】――タイミングと位置取りが極限にシビアな“カウンター反撃型”の技。


「1フレームでも遅れたら、成立しない……」


玲央は、何度も失敗しながら、それでも手を止めなかった。


――かつて、プロだった頃の自分ならできた。

でも今の自分には、それが“遠い”。


(……それでも、戻りたい)


PCモニターに、かつての自分の戦いが映る。


「超えるんじゃない。……奪い返すんだ、全部」



《未来の決意》


一方、未来もサポートとしての限界を感じていた。


(玲央くんの足を引っ張りたくない……)


自分が未熟だったせいで、玲央のコンボが潰された過去がある。

だから彼女は、“回復重視”から“サポート型の攻撃干渉”スキルへとスタイルチェンジを決意した。


「私も変わらなきゃ……“あの時”の玲央くんに、追いつくために」



《陽斗の挑戦》


陽斗もまた、自分なりに限界と向き合っていた。


(俺は……ただの“便利屋”じゃねえ)


どんなポジションでも器用にこなす自分。

でも、それは裏を返せば“突出した強みがない”ということでもあった。


「玲央は本物の天才だった。俺は……なんだ?」


陽斗は、自分の武器を探すために、使用キャラを一時的に変える。


「“ハヤブサ型”のピアッサーか……尖りすぎてて、扱いにくいけど……」


彼は決意する。


「俺の“強み”は、俺が作る。過去の玲央じゃなくて、“今の玲央”に並ぶために」



《運命の対戦前夜》


夜。


玲央の部屋に、未来からメッセージが届く。


『明日、怖いけど……それ以上に、楽しみ。』

『玲央くんと、陽斗と、私の3人なら、きっと戦える。』

『一緒に、今度こそ、過去を超えようね。』


玲央はスマホを見つめたあと、静かにベッドに横たわった。


天井を見つめながら、呟く。


「明日、勝つ。必ず勝つ。そして……“神代”へ、届かせる」

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