第16話文学的ミーム
ソトナカ「おい、お前また麦茶ちょい残ししてるやん。」
タニヤマ「ん?ああ、ソトナカも飲みたいかなって思って。」
ソ「こんなミリ単位で残しても意味ないやろ。毎回俺に麦茶作らせるために姑息なことすんなや。」
タ「ソトナカ、お前だったのか。いつも麦茶を作ってくれていたのは。」
ソ「誰がごんぎつねや。なんで麦茶作って兵十に撃ち殺されなあかんねん。」
タ「ごめんごめん。てか、反射的に小説の名シーンを引用できる俺って、なんか教養ある文化人って感じしない?」
ソ「ごんぎつねで文化人気取りになられてもな。」
タ「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだなってか?」
ソ「無理やりエーミール引用すな。なんやねんそのチョイス」
タ「最近小説読むのハマってんねん。」
ソ「あっそ。てゆーか、テーブルの上を片付けろ。どうせ勉強せんクセになんでTOEICの教材広げとんねん。」
タ「おいおい、『精神的に向上心のないものはばかだ』って言うやろ?勉強しようとする気持ちが大切やねん。」
ソ「ダラダラ2時間もネトフリ見てるやつの言葉ちゃうやろ。Kも呆れとるわ。」
タ「あー。俺、文化人の才能あるかも。」
ソ「まためんどくさいスイッチ入ったな。」
ピンポーン
タ「あ、誰やろ。はーい。どちらさん?…その声は、我が友、李徴子ではないか?」
ソ「おい!知らん人にはやんなって!」
タ「はい、はい。宅配便ですね。玄関の前に置いといてください。」
ソ「なんで玄関の前やねん。普通に受け取れや。」
タ「いや…宅配のお兄さん、山月記知らなかったっぽくて…。普通に滑ったのが恥ずくて…。」
ソ「自業自得やんけ。早よ取ってこい。」
タ「はいはい。…うんとこしょ。どっこいしょ。」
ソ「おおきなかぶやん。もはや絵本やん。」
タ「実は、国語の教科書くらいでしか小説って呼んだことなくて…。そろそろ限界かも。」
ソ「なんでそれで文化人になれると思ったん?そもそも、文化人に該当する人らもやたらめったら小説から言葉を引用したりせんやろ。」
タ「え、そうなん?」
ソ「自らを文化人と名乗る人に会ったことないから知らんけど。でも、さっきみたいに小説のセリフをパクッてドヤるのって、ネットミーム使ってはしゃいでる陰キャと変わらんやろ。」
タ「なんか俺以外も傷つけてない?その意見。」
ソ「ともかく、俺が言いたいのは、たまに引用するくらいならええけど、文脈とか無視して無理やり使いまくるのはやめてくれってこと。見聞きした言葉をそのまま使うんじゃなく、咀嚼して自分の言葉で言い表せるようにする、それが教養ってもんやろ?」
タ「めっちゃ教養ある人の言葉やん。座右の銘にしたいくらいやわ。」
ソ「まあ分かればええけど。てか荷物なんやったん?」
タ「えーと…あ、お前がネットで注文してた新しい食器やな。」
ソ「おーサンキュー。こっちに渡してくれ。」
タ「ほーい、あっ!」
ガシャーン
タ「ご、ごめん。手が滑った…。」
ソ「…。」
タ「ソ、ソトナカ…?」
ソ「…。」
タ「…ソトナカは激怒した…?」
ソ「正解。」
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