第25話 爆裂魔法がくれる日常

「……カズマカズマ! 今日こそは、朝から爆裂魔法です!」


めぐみんの声で、カズマは眠そうな目をこすりながら起き上がった。


「まだ朝だぞ……? 昨日、あんなに歩いたのに、元気だな、お前……」


「当たり前ですよ。爆裂魔法を撃つという使命が、私の眠気など一瞬で吹き飛ばしてくれます!」


「使命……って、お前の人生、爆裂魔法しかないのかよ……」


「ふふっ、ありますよ? カズマとの冒険も、私の大事な人生の一部ですから!」


言い終わったあと、めぐみんは少しだけ顔をそらして頬を赤らめた。


「……今の、ちゃんと聞こえてるぞ」


「し、知らないですっ! 行きますよ! 今日も爆裂日和ですからね!」


いつも通りの朝。でも、少しだけ、何かが変わったような気がする。


街の外に出て、丘を目指して歩く。


風が気持ちよくて、空は雲一つない青空だった。


「なあ、めぐみん」


「はい?」


「昨日の話、あんまり変に思ってないか?」


「……日本の話、ですか?」


「うん。色々変なところがあっただろ。魔法がないとか、機械の国とか……」


「変だとは思いましたけど、嘘だとは思ってませんよ。あなたが言うと、本当にあったことなんだろうなって思えますから」


「……そっか」


カズマは、少し照れたように笑って歩く速度を少し緩めた。


めぐみんも隣にぴったりと並ぶ。


「ねえ、カズマ」


「なんだ?」


「その“にーと”って、やつ」


「うっ……」


「今のあなたは、もう“にーと”じゃないですよね」


「……まあ、な。毎日働かされてるしな。命懸けで」


「うふふっ、それは確かに。でも、カズマが異世界に来て、ちゃんと誰かの役に立ってて……私にも、ちゃんと笑ってくれてて。私は、今のあなたが好きですよ」


一瞬、風の音が強くなった。


けれどカズマの耳には、めぐみんのその言葉だけが、やけに鮮明に残った。


「……今の、マジで言った?」


「えっ!? べ、別にそういう意味じゃ……! 尊敬というか、その、仲間として、ですからね!? 誤解しないでください!」


「はいはい。……でも、ありがとうな」


「っ……ずるいですよ、そういうの!」


めぐみんはぷいっと顔をそむけながらも、笑っていた。


その笑顔を見て、カズマは心の中で思う。


――たぶん、俺はこの世界で、一番いい場所にいるのかもしれない。

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