第9話 どうでもいい話がしたい夜

その晩。

パーティーはいつものように、酒を交えながら夜のひとときを過ごしていた。


「今日は何だか、ゆっくりしてるなぁ……」


カズマが呟くと、めぐみんも頷いた。


「そうですね。あまり激しい冒険もないし、特に用事もなくて。たまには、こういう日があってもいいかもしれませんね」


「ん、そうだな。だいたい、お前も毎日爆裂魔法撃って、体力消耗してるだろうし」


「ふふっ……それも一つの生き甲斐なんです。でも、今日は何だか違うんですよ」


「どう違うんだ?」


めぐみんは少し考えてから、顔を赤くしながら言った。


「……実は、こうしてカズマとふたりで、何も考えずにこうやって話している時間が、なんだかとても楽しくて」


カズマはその言葉に少し驚いた。

だって、めぐみんがこんなに素直に自分の気持ちを言うことなんて、滅多にないからだ。


「……へぇ、意外だな。お前、こういう時間も大切にしてるんだな」


「そうですね……最近は、毎日が冒険と爆裂魔法ばかりで、ついつい忘れがちでしたけど」


「お前がたまにはこういうことを考えるなんて、なんか新鮮だな」


「うるさい! 別にカズマに言われたくないです!」


めぐみんは恥ずかしそうに顔をそらしたが、その目にはどこか楽しげな輝きが宿っていた。


その瞬間、カズマはふと気づく。

めぐみんとの時間が、いつの間にか心地よくなっていることに。


「なあ、めぐみん」


「なに?」


「……俺も、こうしてゆっくり話すのは嫌いじゃない」


めぐみんはその言葉を聞いて、少しだけ顔を赤らめた。


「……カズマも、ですか?」


「ああ、たまにはこうやって、何気ないことを話すのも悪くない」


その言葉を聞いて、めぐみんは小さく息を吐いた。


「……なんだか、こうやって一緒にいるのが当たり前になりすぎて、カズマのことを大事にしてるってことを、つい忘れちゃうんです」


「……そうだな。俺も、めぐみんがいるのが普通になりすぎて、気づかなかった」


めぐみんはその言葉に目を伏せた。

そして、少しだけ距離を縮めて、そっとカズマに言った。


「……カズマ、私、やっぱりあなたのことが――」


その言葉を、カズマは胸の奥で感じ取った。


その瞬間、どこかで何かが変わった気がした。

お互いの気持ちが、少しずつ、少しずつ近づいていく。

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