第8話 ふたりぼっちの帰り道

爆裂魔法を撃ったあと。いつも通り、めぐみんは動けなくなっていた。


「ほら、背中貸してやるよ。いつものやつだろ」


「ふふっ……ありがとうございます、カズマ」


夕日が傾く中、カズマは背中にめぐみんを背負って、山道を下っていた。


「にしても、ホントに毎回毎回、よく飽きないよな」


「爆裂魔法はですね、一度の発射にすべてを賭ける、その儚さが美しいのです」


「いや、それが“毎日”って時点で儚くはねーよ」


「うっ……確かに。でも……それでも私は、爆裂魔法を好きでいたいのです。たとえ理解されなくても」


「……いや、理解してるぞ?」


「えっ?」


カズマの声に、めぐみんがぴくりと反応した。


「俺にはわかる。お前が、あの魔法を撃つときの目……本気で、嬉しそうなんだよな。だから、止めろとは思わねぇよ」


「……カズマ」


めぐみんの声が、小さく揺れた。


背中越しに感じる体温が、なんだか少しだけ近くなった気がする。


「……えへへ。そう言ってくれるの、カズマだけです」


「だろうな。アクアとダクネスに理解できるわけないだろ」


「……カズマ?」


「ん?」


「……今日はですね。いつもより、背中があったかいです」


「そりゃお前、密着してんだもん。暑苦しいくらいだわ」


「……ばか」


めぐみんは、そっとカズマの背中に顔をうずめた。


カズマは、その感触に少し驚きながらも――何も言わなかった。


夕暮れの中、ふたりぼっちの帰り道。

この時間だけは、爆裂も何もない、静かで穏やかな時間だった。

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