第41話 眠り姫を起こすのは

人生で初めての入院生活は、たった2日であっけなく終わった。

魔力は時間経過で回復するものだし、あと精密検査を受けただけ。



問題はアカリちゃんだ。

傷は治癒しているのになかなか目を覚まさず、病院に搬送されてからは今日で一週間が経つ。






アカリちゃんが眠っている間に、遠瓦さんという方から謝罪された。

ブラックボックスという組織の事は警察全体が警戒していたが、戦力が足りずに撲滅までは出来なかったらしい。

でも助けに来てくれたじゃないか、と私が返すと、彼女は少し気まずそうにこう言った。



「国家に属する者として、善良かつ優秀な探索者を亡くすわけにはいかないというのが1つ。それ以前に大人として、私には子供達を守る義務がある。それを諦めた彼奴等とは違う。···生憎、力不足だったが」






マソリアでアカリちゃんの保護者として努めていた、ビリーとノックスという人たちも病室に来てくれた。



「アカリ、朝寝坊にしては長すぎるぞ」

「···ビリーってギャグのセンス無えよな」

「うるせえ」

「まあとにかく···出来るだけ早く目を覚ましてくれよな。ガールフレンドも心配してるぞ」






入院から5日後、ブラックボックスニホーン支部壊滅のニュースがテレビに流れた。

ブラックボックスは警察にとっても憎むべき敵だったらしく、遠瓦さんがヤクザばりの迫力でアジトに乗り込み、ネット上で大バズりしていた。

そしてそれに呼応して世界中の警察が同時に動き出したから、全世界からあの組織が根絶される日もそう遠くないだろう。






···こんな調子で世間は慌ただしいのに、彼女はたった1人で眠り続けている。

検査をしたところ、『血の巨人』の物と思しき物質がアカリちゃんに害を及ぼしている可能性があると言われた。

弾けた肉片から返り血を大量に浴びていた事が原因で、有害物質を取り込んだのかもしれない。



もしも一生このままだったら?

彼女が目を覚まさなかったら。

考えるだけで怖くなる。涙が零れる。

誰もいない静まり返った部屋の中で、私は不安に駆られてしまう。

彼女の閉じられた瞳を見るのが怖くて、だけど彼女から離れるのも恐ろしくて。



だから、だろうか。

つい魔が差してしまい、目を閉じて、唇を重ね合わせてしまった。

···阿呆か私は。意識の無い相手にやっていい事ではない。

数秒前の自分がいたらぶん殴ってやりたい···と思いつつ、目を閉じたまま唇を離し、柔らかな感触を反芻する。

そして目を開くと───



「······ミオちゃん?」



───アカリちゃんが顔を真っ赤にしていた。



「···え?」

「いやビックリしたのはこっちだって」

「···いつから起きてたの?」

「ついさっき、唇に何か柔らかいのが触れて、それで目を覚ましたらミオちゃんの顔がドアップで見えたから···」

「ごめんなさい」

「いや、別に···いいけどさ···」

「え、いいの?」

「うん···ミオちゃんなら、いいよ?」



その後私たちが何をしていたのかは···想像にお任せするが、“すごく良かった”とだけ言おう。



病室の窓、レース越しの光がきらめいていた。








──────────────────────


2人は幸せなキスをして終了!!

というわけで、この作品はこれにて完結です。

自分でも「え、これで完結!?」と感じる幕切れですが、これが限界でした。

オリジナルの連載は難しいですね···。


ここまでの読了ありがとうございました。

またどこかでお会いしましょう。


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