第11話 「包メ、護羽――守ル刃、今在ル」
この刃は、「守るため」に生まれた。
ずっと声を聞いていた。
けれど、ようやく今、魂の名で――それを“呼べる”。
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【空気が変わった】
紫音が地に倒れ、
その血が土を染めると同時に、
辺りの霊圧の“層”が、一段落ちたように感じられた。
沈黙。
でも、圧倒的な“心音”だけが、春陽の中で高鳴っていた。
(俺……今、何をすればいい)
(紫音が俺を庇って、斬られて――
空斗は、今も前で戦ってて――
……それやのに、俺は……)
⸻
【声が、また響く】
『…… ぼくを呼んで。』
『“守りたい”んでしょ?
なら、もう迷わないで』
『お兄ちゃんの刃は、“誰も傷つけない”で、
“誰かを護る”ためにあるんだから』
⸻
【春陽、目を見開く】
深く、強く、息を吸う。
「……俺は、ずっと……
怖かったんや」
「“護れなかったら”どうしようって……
“失ったら”どうしようって……」
「でも、それより――
俺は、失いたなくない!!」
「“紫音”を――
“仲間”を――
誰一人、死なせたくない!!」
⸻
【魂が答えを返す】
その瞬間、春陽の中で、
確かに何かが“繋がった”。
名前が、胸の奥に“光”として浮かぶ。
それは――
何度も、夢の中で聞いていた“声”そのままの、優しい響き。
『包め、“護羽(まもりばね)”』
⸻
【始解・発動】
次の瞬間、春陽の霊圧が炸裂する。
ドゥン――と、地面ごと空気が揺れ、
春陽の足元から、白金の羽が舞い上がる。
握る刀が変質する。
刀身は白金色へと変わり、光の羽紋が走る。
鍔が左右へ広がり、
まるで翼のような形へと変わっていく。
その光景の中心で、春陽は静かに立っていた。
彼の背後――
一瞬だけ、巨大な“光の羽”がふわりと浮かぶ幻影。
⸻
【優しい霊圧が、広がっていく】
振るうたびに霊子が舞い、
空気が温かく、やわらかく、
心に触れるように“包んで”いく。
空斗が一歩下がり、気づく。
空斗「……癒しの霊圧……いや、“羽衣”だ。
これは……治癒と守護の、共鳴型の刃――!」
⸻
【春陽、紫音の元へ】
駆け寄り、しゃがみ込み、
斬魄刀をゆっくり横に振る。
「“陽結の羽衣”(ようけつのはごろも)……!」
白金の羽がふわりと舞い、
紫音の傷ついた身体を、
そのままふわりと包み込んだ。
羽は光のように淡く、
だが確かに、霊圧が整っていく。
呼吸が、戻る。
鼓動が、落ち着く。
春陽の目に、
滲んだ涙が光の粒になって流れた。
⸻
【背後に迫る模倣体】
だが――模倣体は止まらない。
無言で背後から剣を振り上げる――その瞬間。
⸻
【春陽、背後に羽衣を展開】
「……“俺が護る”。
ここから先は、
“誰も倒れさせない”――!!」
羽が反応し、後方へ自動展開。
霊子の結界がバリアのように模倣体の一撃を受け止め、
力が拡散され、爆風だけが辺りに巻き起こる。
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春陽の霊圧が、完全に目覚めた。
それは“斬る”ための刃ではない。
“包む”ための、
“護る”ための――最も温かく、決して折れない刃。
そしてその刃の名は、ようやく呼ばれた。
《護羽(まもりばね)》
この瞬間から、春陽は“戦える癒し手”として、
真にその魂を刃とした。
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