亀蛇宇宙のだるま落とし
松ノ枝
私は槌で打ち抜いた
巨大な蛇が己の尾を噛み、輪を成している。その上には亀がいて、またその上には七頭の象が居る。象は大地を支えている。
私は槌を持って、重なった動物たち目掛けて、横に振る。だるま落としのようなもので、亀を打ち、象を打ち、続けて大地を打ち抜く。打ち抜いたそれらを拾い上げ、自らの手で積み重ねる。蛇の上に象を置き、その上に亀を置く。大地は亀の甲羅の上に。
象は今まで亀の上に居たので、亀の乗られる今、部下が上司になった気持ちだ。重く、苦しいが、七頭いる分、楽である。一方、亀は大地を背負い、こう思う。軽いと。軽くて、楽で、象に比べて気を遣わなくていい。嬉しくなって、亀は踊りだす。象は落とすまいと亀の動きに気を配る。このとき、大地は恐怖していた。今まで大人しかった亀が踊りだしたのだから、上の大地は揺れ始め、落ちそうになっているから。甲羅の上の、ただでさえ安定しない亀の上で、そんな暴挙に出られては怖くて仕方が無くなる。そんな中でも蛇だけは絶えず、静かに輪を造る。
もう一度私は槌を振るう。次は象を大地の上に置き、亀を象の上にしよう。亀は上機嫌のままで、象は黙って支える。大地は再び危機に瀕して、困っている。突如として、世界各地に、28本の巨大な柱が現れたのだ、天変地異の前触れだの、神の怒りだのと人間は阿鼻叫喚の嵐だが、宇宙はそんなことなど知らんふり。いや、気にも留めていないのかもしれない。
蛇が驚く顔が見たいと、私は蛇を持ち上げる。蛇の輪を断ち、象を持ち上げ、形を造る。象を繋げて、輪を造り、蛇の元居た場所に。蛇は象の下に、支えるように置いていく。
蛇は力いっぱい象を支える。今までのすまし顔は消え去り、こいつは傑作と私は笑う。象は支えるものが無くなり、上に立ってはいい気味だと下を見る。
そうして遊んでいると父が私の部屋に来た。急いで、私は彼らを元に戻していく。父の部屋にあったもので、勝手に遊んでいたとバレたくはない。彼らを元に戻し終わると同時に父が部屋に入ってくる。隠す時間は残ってなかったのか、父に見つかり、こっぴどく怒られた。父が部屋に来たのも、やけにうるさくしていたからだそう。私はこのことから一つ学んだことがある。
今度から、亀蛇宇宙で遊ぶときは槌など使わず、手で組み替えて遊ぶのだと。
亀蛇宇宙のだるま落とし 松ノ枝 @yugatyusiark
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