ぱちぱち、君のとなり(2)

ぱちぱちと火の粉がはじけて、夜空に吸い込まれていく。

 私は湊と、後夜祭の輪から少し外れたベンチに腰掛けてた。


「なあ千夏、キャンプファイヤー燃えすぎじゃね?」


「湊が薪盛りすぎたからでしょ」


 ちょっと呆れながら、湊を見る。

 あんたが悪いでしょ、って顔をしてやった。


「いや、ほら。盛り上がったほうが思い出になるって」


「顔、あっついんだけど」


「俺のせいかよ」


「湊のせいだよ」


 プログラムをパタパタ仰ぎながら、こっそり笑う。

 なんか、こういうの、悪くない。


「でもまあ、楽しかったよね。文化祭」


「うん。なんだかんだ、楽しかった」


 ちらっと湊の横顔を見ると、火に照らされてて、なんかやたら真剣な顔してた。


「特に俺と回ったときな」


「……は?そんなこと言ったっけ?」


「言ってねーけど顔に書いてあった」


 はあ?としか言えなかった。

 でも、ちょっと心臓がうるさいのは内緒。


「それ、湊の願望でしょ」


 うまく誤魔化すために、にやりと笑ってみせる。


「つか、お前こそさ。俺と回ったあと、クレープ二個食っただろ」


「二個も食べたっけ?」


「食べた。バナナとチョコのやつと、あとイチゴ爆弾」


「イチゴ爆弾てなに」


「なんかめっちゃイチゴ乗ってたやつ」


 説明が雑すぎて、笑った。

 やっぱこの人、アホだ。


「覚えてる湊、怖くない?」


「覚えてるっつーか、インパクト強すぎただけな」


 バカだなあって思いながらも、ちょっとだけうれしかった。


「優しい〜湊、優しい〜」


「やめろ、バカにすんな」


「褒めたんだよ、たぶん」


 火の粉が、パチンと夜空に飛び跳ねる。

 夜の空気が、すこしだけ、甘かった。


「……あれだな」


「なにが?」


「お前と、こうして座ってるの。悪くないなって」


「ふーん。まあ、悪くはないね」


 わざとそっけなく返して、

 ほんとはけっこう、うれしかったけど、それも言わないでおいた。

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