第32話 本来の現実

 食事後チアが小屋で休んでいる間。

 小屋の外に出た俺たちは小声で話していた。

「ってことで――まずはこのあとまた俺たちは食料探しだな。そしてそれと一緒にライは線路をつなげてもらう」

「わかった。さっきも試していたんだけど。どうやら線路を分岐させる――ってことができないみたいだから。とりあえず一瞬線路を作ってみてから。新しい線路が作れるならそのあと森の方へ――になるかと」

「わかった」

「でもライのスキルはほんと助かるよな」

「ああ歩かなくてよくなるからな」

「それに荷物も運べるし」

「あ、そうそう一ついいかい?」

 男性陣が話しているとオロールが片手を遠慮気味に上げて発言した。

「どうした?オロール」

「いやね。ちょっと思ったんだけど、小屋と線路海から丸見えで大丈夫かね?」

「……あ」

「あっ、そうかまた島流しの人が来ると」

「島の状況がバレるな。もし島流し組の俺たちが何やらいい生活してそうとか思われたらアウトだな」

「確かに」

「うんうん。あの国絶対おかしいから。線路がある――とか建物があるってバレると――かも」

 オロールに言われて俺も気が付いたが。

 そういえば今は海岸線に線路を作った。

 しかし、よくよく考えると。島流しになるのは俺たちが最後ではない。

 また誰かが送られてくる可能性がある。

 その際にもし島の変化に気が付かれたら――厄介である。

「ライ。線路とかは移動できるのか?」

「移動ってより。一度撤去になるかと――でもスキル的にはまだ余裕があるので、線路を一度移動させて――そのあと小屋も移動させれば――それに建て替えるならもっとちゃんとした小屋にできるかもしれません。みんなが使っても狭くないような……」

「そうか、もうライのスキルはなんでもありだから驚かなくは――ないがでもうん。わかってきた」

「確かにな」

「ほんとなんでもありだわ」

 どうやら俺のスキルもう――慣れだした?ではないが。ここに居る全員がなんかすごいことしているのは普通と思いだしたようだ。

「でもだ、移動となると――」

「アドリアン。やっぱり少し森に入ったところじゃないか?ちょうど木々で海からは隠れてるし」

「だね。あそこはそこそこ慣れてきたところだったからね」

「だな。ってことは、まだライたちは知らないが――やっぱり話しておくか」

 するとアドリアンが少し表情を変えて話し出した。

 この後何を話したか簡単に説明すると、俺からすると少し前に先に聞いていたことだった。

 森の中で俺たちが来るまでは生活していたが。その近くにはここで亡くなった人の亡骸がまだそのままあること。

 一応チアには話さずに――と考えていたらしいが隠すのが難しくすでにチアも知ってると。などが話された。

 もちろん初めて聞くミアとルネは何とも言えない様子。次は自分かも――などと思ったりしたかもしれない。


 と、アドリアンがある程度話をしたところで、夜になる前に移動できた方がいいということで、一度全員で森の中で少し前まで住んでいたところに行くことにした。

 チアも起こしてアドリアンがチアを抱っこして森へと入っていく。

 海岸からすぐに急に薄暗くなるが――少し歩くと何とも言えない臭いが鼻についた。

 意外と近くにあの場所があるらしい――と、思っていると少し開けた場所に出た。

 そこには焚火のあとがあったり。少し大きな葉っぱなどが敷き詰められているところがあった。そして流木で簡易的な屋根が一部だけ作られている場所もある。

「アドリアンさんたちはここで――」

「そうだ。もうしばらくになるな」

「だからライの小屋とかめっちゃ感動だったんぞ」

「ここはゆっくり休めなかったからね」

「で――見えはしないが。ここからすぐ。そこの木の奥に――まあ亡くなった奴が積まれているというとだがでもそれしか方法がなくてな」

 どうやら先ほどの鼻につく臭いは――腐敗臭とでもいうか。とにかく普段はそうは嗅ぐことのない臭いだった。

「あ、えっと」

 すると、ミアが何か思いついたのか声を出した。

「どうしたミア?」

 アドリアンが気が付きミアに声をかける。

「その――亡くなった人ってそのままって言ってましたよね?」

「ああ、埋めるにも道具も何もないからな。少し前は何とか埋めたみたいだったが。もう今は無理だな。あと海に流したこともあるが――結局打ち上げられることもあってな。だから今の形しかできなくてな――

「ならその、何とかなるまで私の氷結魔法で凍らせておけば――」

「――あ、そうか。凍らせるか」

 ミアの提案で俺にもあることが浮かんだ。

「ミア」

「えっ?何ライ?」

「ミアの氷結魔法って水も凍らせる?」

「えっと、うん」

「ならその亡くなった人を凍らせるだけだと――だから俺がスキルで水を出してそれで包む?になるのかコーティングじゃないけど。少しでも凍る時間が長くなるなら――って思ったんだけど」

「あー、どうなるかはだが。今できることでならライの考えも試す価値あるかもな。じゃあ――とりあえず先にするか?」

「あ、その前に小屋出しておきます。オロールさん確か食材運んだ方がいいんですよね?」

「そうだね。今の小屋に残ってるから――」

「ならこの場所に建物を作りますから。そのあと亡くなった人のところに」

「わかった。ならライが建物作ったら、マルタンとチボー海岸の小屋から食材運ぶんだ」

「はいよ」

「了解」

「じゃ作りますが――とりあえず――あ、この辺りがいいかな?」

 俺は少し歩きなるべく日当たりのよさそうな場所を選んで、ステータス表を開く。


《2763980》


 §


 ――スキル使用時消費スキルポイント――


 ☆ 砂利。1キロ。10P

 ☆ 石炭。1キロ。500P

 ☆ 線路。1メートル。1000P

 ☆ 客車。100000P

 ☆ 貨車。100000P

 ☆ 蒸気機関車。 1000000P

 ☆ 建物。1軒につき。1000000P

 ☆ 飲めない水。1000P

 ☆ 順次解放。


 §


 スキル的には建物はあと2つしか建てれないが。それでも寝床があるだけで違うので俺はみんなに見られつつ家のイメージをする。

 2階建て――などは目立ってしまうかもしれないので。なるべくコンパクトに平屋ででも各部屋があるといいかも――などと思い。とりあえず広間と、その周りにたくさんの小部屋がある建物をイメージする……そして家具もイメージしていく。

 先ほどはテーブルしかなかったので丸太の椅子でいいのであるといいな――や、寝床でベッドがあれば――床に寝るよりましだろう。などなどいろいろ考えていく。


(ライめっちゃがんばってる?)

(さっきから動かないな)

(大丈夫なの?)

(――)

(雨風がしのげたら十分だからな)

 

 ライがスキルを使っている間後ろでは小声でみんなが話している。

 そんな中俺はイメージを膨らませる。

 どこまでできるかはわからない。

 実際先ほどの小屋も結構大雑把な感じになっていたので、もしかするとそうなってしまうかも――と、思いつつもできる限りイメージして……。

 イメージして……。

 イメージしていく。

「――――――――――――よし」


 そしてみんなが『本当にライ大丈夫か?』と、思い出したころ。

 そんなことにはまったく気が付くことがなかった俺だがスキルを使った。


 ――が。何も起こらない。

 しかしこれはすでに経験済み。


「うん?何も起こらなくないか?」

「大丈夫だと思う」

「さっきも少ししてからだったし」

「そうなのか」

 小屋の時を知らないチボーがつぶやくがミアとルネがすぐにチボーに話していた。

 その他の人も興味深そうに何もない場所を見ているが――何も起こらない。

「まだかな?」

 さすがに何も起こらなさすぎるからか。チアが不思議そうにつぶやいた時だった。


《1763980》


 §


 ――スキル使用時消費スキルポイント――


 ☆ 砂利。1キロ。10P

 ☆ 石炭。1キロ。500P

 ☆ 線路。1メートル。1000P

 ☆ 客車。100000P

 ☆ 貨車。100000P

 ☆ 蒸気機関車。 1000000P

 ☆ 建物。1軒につき。1000000P

 ☆ 飲めない水。1000P

 ☆ 順次解放。


 §


 きた。俺が脳内でそんなことを思った時だった。


 ドッーーーーーーーーーーーーーズン!!!!


 目の前にそれはそれはそこそこ大きな地震が起きたのではないかという揺れと、砂埃であたり一面何も見えなくなったのだった。

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