第31話 食事
「簡単なものだけどご飯できましたよ」
「スープできたよ」
自分のスキルに対して少し試行錯誤をしているとオロールとチアの声が小屋の方から聞こえてきた。
「早くしないと――ルネが全部食べちゃうよ」
またチアから何やら不吉な――と言うべきか。いやいや待てと言う言葉も追加される。
そういえば外に居るのは俺のほかには男性陣3人とミア。確かミアはルネが寝てしまったから外に来たはずなので――小屋の中にルネはいた。
そして今食事の準備ができたということは――。
「こりゃ急がないと食べ損ねるな」
俺が考えている間にアドリアンが小走りで小屋に向かう。
「あ、アドリアン」
「待てよこれで飯抜きはきついぞ」
アドリアンを追いかけるようにマルタンとチボーも小屋に向かう。
「ライ行こう」
「あ、ああ」
ミアは俺に声をかけてくれた。
ちなみにミアはニコニコしている。
その理由は多分顔を洗ったりできてさっぱりしたからだろう。
ミアについていく形で小屋へと戻ると、狭い小屋の中にあったテーブルの上にスープが作られていた。
さすがに食器類はないので、流れ着いたものなどを使っていたらしく。大きさはさまざま。また大きな鍋だけが前からあるらしく。基本それを使って料理をしていたらしい。
なんやかんやでこの島奇跡的というべきか。あるべ便利――と言うものは見るかるらしい。
「おいしい。あったまる」
小屋の中ではすでにルネがスープを飲んでいる。両手でお皿をもっておいしそうに飲んでいる。
そりゃスプーン類もないためそうなるのだが――よく見るとルネのお皿になっているものはそこそこ大きいんだが――もう半分飲んでいる。
つまり――本当に急げらしい。
俺がテーブルの近くに来るとオロールがスープを取り分けてくれる。
「ありがとうございます」
「いやいや、こっちがありがとうだよ。今日は海藻たっぷりのスープが飲めるからね」
「具だくさんだな」
先にスープを飲んでいたアドリアンたち男性陣も満足そうだ。
どうやらほぼ海藻だけだが。ここではこれでも十分なごちそうらしい。
まあ山奥にいたときの俺も同じような物ばかりになる時期はあったので、こういうのならしばらく続いても問題ない。
受け取ったスープを一口飲むと――口の中に久しぶりにうまみが広がる。
くーーっとなる感じだ。
「うまい」
「うん。久しぶりに温かいご飯だ」
俺の横に居たミアも感動しつつ飲んでいる。
ちなみにスープはトロッとした感じで、どうやら海藻のエキス?がしみ出したらしく。調味料などがないとのことだったが。しっかりうまみがあった。
どうやらそれがオロールのスキルの力らしい。
多分普通の人。俺が同じようにしてもこの味は出せないのだろう。
食事中の小屋の中はみんなが笑顔だった。
島流しにあった人が集まって食事をしているようには見えない光景だった。
なお、今はスープだけだが。一応たくさん取ってきたので、あとはこの後魚とかが取れたらさらにおいしいスープになるらしい。
食べながらオロールがみんなに話していた。
「こりゃ絶対魚だな」
「そういや初めに魚捕まえてなかったか?」
「ミアのスキルでまだカチカチ」
「――ごめん」
「いやいや、でもミアのスキルがあると、うまいこと使えば凍らせて保存できるよな。俺のところはよく冬に凍らせていたな。保存するために」
食事をしつつ。ふとマルタンがミアのスキルによりカチカチになった魚の話題を出したので、その時俺は山での生活を思い出した。
「あ、ライが居たのは寒いところなんだ」
「極寒だったな」
「俺のところはそこまでだったな」
「わたしの居たところも冬は寒かったねーでも確かにミアちゃんのスキルは使い方によっては食材を保存できるのは確かだよ」
「そうなんですか」
料理をするオロールがいうとミアもうなずく。
さすがに何も料理をまだ見せていない俺の意見だけでは信じれなかった様子だ。
それからも話しながら食事の時間は過ぎていく。
ちなみにほとんど声を出さなかったルネはしっかり最後まで食べつくしていた。
なおスープのためお腹がチャポンチャポンになったらしいが。
まあでも空腹よりかははるかにましだろう。
俺もいい感じに満足した。
そしてお腹が膨れれば。ちかはまたお休みの時間らしく。うとうとしだしたので、食事の片付け中はもともと部屋の隅で食べていたアナイスがチアのことを見ていた。
なお離れて食事をしていたが。ちゃんと会話は聞いていた様子。
またチアが隣で寝ているだけでも緊張するのか。顔を少し赤くしつつもチアを見ているアナイスだった。
片付けが終了すると。寝ているチアは室内で休ませて置き。一度小屋の外にみんな出て話し合いが始まった。
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