第29話 異変
トップオーバカーネ国の国王の間。
何やらここが最近にぎやかとなっていた。
まあ今までもにぎやかだったのは変わらないのだが――ちょっとにぎやかの意味が変わってきていた。
「どうなってるんだ!また食料が入らない場所が出てきただと?」
「はい」
「突然どうしてだ」
「今原因を調査中です――」
「早くしろ!」
「はい」
ご機嫌斜めな声を出しているのは、ロマン・ジラール。この国の現国王である。
少し前までは優雅に暮らしていたが。ここ最近はどうもイライラしていることが多かった。
「で、シモンの方も何かあったのか」
「ああ」
報告に来た人が部屋を出ると。今度は同じ部屋の椅子に座るシモン・ベルトラン。不死族。死霊で骨に黒いマント姿。
死霊の中では唯一と言っていい。体がしっかりある不死族の王が答えた。
「こちらは災害続き。突然山の方から土砂崩れ。崖が崩れたなどで住む場所が狭くなっている」
「それはそちらで何とかするべきだろ」
「崩れてきているのはロマンの持つ土地。あの山奥の場所からだからな。原因を何とかしてもらわんと。やっても意味がない」
「なんで突然――」
「ロマンがあの山奥で今何かしているんだろ?」
「まさか――送り出した奴らがサボっているのか」
「それもあるんじゃないか?」
「クソ。おい誰か誰かいないか」
「はい。お呼びでしょうか」
ロマンが声を荒げると、部屋に男が入ってくる。
「今すぐ山奥で作業している奴らに伝えてこい。サボってるのはわかっている。これ以上下の町に被害を出すようなら。罰を与えるとな」
「――あ、はい」
「早く行け!」
ロマンが命令すると命令を受けた男性が慌てて部屋を出てく。
「ロマン」
すると甘い声が部屋に響く。
今度は部屋の隅に置かれたソファに居た精霊族。エルフのレティシア・ブーシェが自分の髪を手入れしながらロマンに声をかけていた。
「なんだレティシア」
「この前言っていた宝石もまだ届いてないわよ」
「なんだと?」
「ほんとよ。今までは滞りなく届いていたのに。少し前から全く川で見つからないって」
「なぜだ。今まで量が減ることはあっても必ず見つかっていただろ?」
「でも取れないって連絡来たって。確か川の上部で今話していたことしてるんでしょ?たくさん人を使って――」
「まさか――離れすぎてスキルが切れたか?」
「それもあるかもねー。もう出てしばらく経つんじゃない?」
「クソちんたらしてやがったか。もしかしてそれで川の上部で宝石や功績を横取りしている奴がいるんじゃ――」
「あるんじゃない?」
「あるかもな」
ロマンとレティシアの話を聞いていたシモンもつぶやく。
「今まで未開拓だった場所に手を付けたところ災害と鉱物が取れなくなった。そこにはロマンが送ったたくさんの使い捨てが行ったんだろ?」
「――あいつら――グルになってばれないとでも――こうなったら行くしかないか。おい、出るぞ。準備をしろ」
「俺はのんびり――」
「何を言ってる。シモンは俺の盾だろが」
「……そうだったな。最近暇で忘れてたよ」
「私も暇だし付いて行ってあげようかしら」
「それはありがたい。道中も楽しめそうだ。おい。早く移動の準備をしろ。開拓地に行くぞ!」
国王のまで何やらいろいろ起こっているようだったが。
まとめると、なんか国内がおかしい。
主に国の中心。山奥で今まで人が立ち入ることがなく。放置されていた場所にロマンが手を出したところ。どうも下流域で災害や。今までは川で多くとれた鉱物類が突然取れなくなったと。
これは開拓地に送った奴らが命令無視をし出した。スキルが切れたか――と、ロマンが思い出したのだったが……。
確かにロマンが未開の地に手を出したことが始まりではあるが――この部屋に居る者たち。そもそもこの国内で住む者たちのほとんどすべての人が山のことを。昔はちゃんと伝わっていたことを伝えず。というか言い伝えが薄れていった。
少し前に国王が島流しにした男が山を守っていた重要な唯一の人物だったと気が付くこともなく。
島流しの際にステータス表の確認や少しでも島流しになった人の話を聞いていれば防げたかもしれないミスを犯した結果。
ここ数千年の平和で豊かな国の要だった場所が崩れたのだ。
それはロマンたちはもう名前すら知らない。
そもそも島流しにしたのに名前すらもう覚えてない男。
ラーイユ・デュマがやっていたことがなくなってしまったからだ。
そして現地へと向かう3人にこの後起こることは――。
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