第18話 小さなお医者さん

「――あ、あの……ら、ライさん?よろしいですか?」

「―─うん?あ、はい?」


 みんなと俺がスキルで作った小屋の中に入ってから少し。

 俺たち3人を入れても実は9人しかこの島にはいなかったので、少し窮屈でも小屋の中の床に座ったりして話していると、みんなが落ち着き自己紹介も軽く終わった頃。

 ……えっ?9人しかいないことをもっと詳しく言ったほうがいい?本当に9人しかいないのか?だって?どこかにいるんじゃないかって?いや、でも俺もアドリアンさんしかちゃんと話してないし。

 一応だが簡単には自己紹介は終わっているのだが。流石にまだ各自の人のことを話せはしない──とかとかとにかく。まあいろいろあるのだが。何とか落ち着いてきたと、俺がみんなを見つつ思っていると。

 年配の女性とこの中では一番小さく。確か――えっと、待て待て、この2人。誰だったか。9人しかいない。そのうち一人は俺。さらにミアとルネを引けば6人しかいないので名前くらいはちゃんと覚えているはず。だからちょっと待て(決して山に引きこもっていたから、人の名前を覚えるのが苦手ということは……あ、オロールさんだ。オロールさんという年配の女性と、もう1人の20代くらいの女性近くに居た10歳くらいの女の子が俺の隣にやって来た(ちなみにこの10歳くらいの女の子は自己紹介の時も恥ずかしがっていた?のか。確かこのオロールさんの後ろでもじもじしていたのでまだ名前は知らない。え?それならオロールさんを思い出すまでに時間がかかりすぎ?実質5人じゃないかって?もうそのことは触れるなである。俺も今覚えたてのことは難しんだよ。そういうことにしておいてくれ)。

 ちなみに俺と一緒に来たミアとルネは少し離れたところで他の人。アドリアンはじめ他の男性────誰だっけ?あ、マルタンさんと。そうそう火が使えるチボーさんと話している。

 そして1人あまっていた俺。決してぼっちではなく。単に座ってのんびりしていたら――オロールさんと、女の子が俺にやってきた(というか1人なのは俺だけではなく――って、今は他の人のことは置いておいてか)。

 何か俺に話があるのかと思い。少し俺もちゃんと立ってオロールさんの話を聞こうとすると

「────チア──です」

 オロールさんに軽く背中を押されて前に出た、女の子から小さな小さな声が聞こえてきた。

 波打ち際なら聞こえなかっただろう小さな声。

 しかし今俺にはちゃんと届いた(まあ今親の中は近くでもミアたちが話しているからそこそこにぎやかなのだが――ちゃんと聞こえてよかった。確か「チア」と、言ったと思う。

 チアと名乗った子はかなり恥ずかしそうにしているが──もしかすると、先ほど自己紹介ができなかったので、オロールさんとともにちゃんと言いにきてくれたのだろうか?とか思いつつ。

「チアか。俺はラーイユ。ライだ。よろしく」

 俺が改めて自己紹介をすると、女の子は小さく頭を下げた。多分わかったということだろう。

 チアも表情が少し安心したような雰囲気に変わっていた。


 ということで、ちょっと落ち着いて一人でいたら年配の女性のオロール。

 ちなみにオロールさんは食材さえあれば料理のスキルがあるのでいろいろ作れるらしい。便利だ。めっちゃ便利だろ

 しかし、国の方ではお店をしていたら、いろいろいちゃもんをつけられて――気が付いたら島流しになったと。

 いやいやもうあの国意味わからない理由で島流しにしていた。

 と、そのことはまたあとに。というか。オロールさんもあまり話したくないような雰囲気。他にも理由があるのかもしれないが(確かボソッとスキルを使えば何でも料理できる――と、言っていたので、それが関係しているのかもしれない。何でも――だからな)。でも深くは聞かないでおこう。

 あと女の子。チアは――やっと名前がわかったところ。まだそれ以外は小さな女の子しかわからないが。とにかく2人が俺のところにやってきましたというところだ。


「――腕――とか怪我してる」

 するとチアが俺の腕を心配そうに見ながらつぶやいた。

 今の俺の腕──そもそもほぼ体全身だが傷だらけである。決して腕だけではないのだが。ちょっと大きめに怪我しているのは確かに腕だ。でもこのくらいならほっておいても良いレベルだと思っている。

「あー、船から落とされたから。でも大丈夫だよ」

 そういえば山奥にいるときも、木々をかぎわけつつ進むと擦り傷だらけだったな――などと思い出しているとチアがその怪我のところに自分の手をかざした。


「――《治癒》」

 すると、チアの手元が淡く光り――。

「おお。怪我が――」

 ゆっくりだが俺の擦り傷が綺麗になっていく。

「あっ、すごい。えっとチアちゃん治癒のスキル持ちなんだ」

 俺がチアの治療を受けているとルネがこちらの様子に近付いてやって来た。

 ミアやアドリアンたちもこちらへと視線を向けている。

「あ、うん。その――家作ってくれたから」

 チアが恥ずかしそうに小さな声でつぶやく。

 うん?そういや、なんでこんな小さいうちから治療ができる――あれ?チアは小さいがもしかして中身は成人――?うーん。女性に年齢は聞けないな。昔それで俺の両親はいつも揉めていたからな。基本母親が瞬殺で勝っていたが。って、また話が脱線してしまったな。えっと、チアのことはまあ置いておいて。

「あっという間だな。ありがとう。チア。痛みもなくなったよ」

「う、うん――よかった」

 ちなみに俺の腕は少しすると綺麗になっていた。

 その後チアはミアとルネの擦り傷も直していた。

 どうやら大きな怪我は難しい(できなくはない)らしいが擦り傷くらいはチアのスキルで綺麗になるみたいだ。

 まあ俺たち3人の擦り傷を治療したあとチアは疲れ切って寝てしまったが。どうやら頻繁には使えないようだ。


 また眠るチアを撫でつつ。オロールさんから少し話が聞けたが。どうやらまだうまく使いこなせていないから普段はほとんど使っていなかったらしいが。今日はチアが自分から俺たち3人に感謝をしたいといったらしい。

 そういえば今更だが。オロールさんはじめアドリアンさんとかもだが。見た目はボロボロ。そしてやせ細っているが。よくよく見ると大きなけがをしている人はいない。

 どうやらチアが治していた可能性はありそうだ。

 でも――なんかオロールさんはほかにもチアのことを知っていそうな感じだったが。それ以上は本人からもしかすると止められているのか。まだ俺たちのことが信用できないのか。それ以上のことは聞けなかった。

 

 ぎゅるるるる――。


 眠るチアの姿になんとなくみんなが癒されていると小屋の中に何やら盛大な音が響いた。

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