第14話 クエスト
【アイテム名:腐った屍肉】
『補足説明:神域で絶望し、亡者の仲間入りを果たした者達のなれの果て。食べれば満腹度が少々回復するが……』
「……するが、なんなんですか。そこから先が一番重要なんです。というか屍肉なんて、誰が食べるんですか」
神域で絶望して亡者の仲間入りを果たした者達って、つまりあの石碑を残した人達とおそらく同類。
ネルヴィア、あのクソ神。
人の尊厳をなんだと思っているのでしょうか。
神だからって、人に何をしても許されるわけではないでしょうに。
いや、そういうふうに考えること自体、神様からすればおこがましいのかもしれませんね。
それにしても満腹度。
現在、私の満腹度は10%しかないありません
メニューに戻ってヘルプで調べてみると、満腹度がゼロになった場合、『空腹』という状態になってしまうそうだ。
空腹状態の詳細はこう。
【状態:空腹について】
・時間経過で体力、魔力が自然回復しなくなる。
・何か行動するたび体力減少し、何もせずとも時間経過で体力減少。
・スタミナの最大値が通常時の四分の一まで減る。
・物理と魔法攻撃で与えられるダメージ激減。
・移動速度減少。
・被ダメージ2倍
神から与えられた祝福なのに。
なんなんですか、この弱点的要素は。
私はがっくり項垂れるが、ステータスでは満腹度が9%になっている。
この問題、早急に解決しないと大変なことになります。
その時、ふいに鈴の音が脳裏に響いた。
『アルマス・ネルヴィア様よりクエストが届きました』
「え、このタイミングで?」
びっくりして周囲を見渡してみるが、人の気配は感じない。
いや、この場合は神の気配でしょうか。
あのクソ神のことだから、どこかで高みの見物をして楽しんでいるんでしょうね。
「……とりあえず、見てみますか」
メニューからクエストを開くと『緊急指令、屍肉に挑戦せよ』という身も蓋もない、悪意を感じるクエストタイトルが表示された。
憤りで口元がひくつくが、まだ内容は見ていない。
念のため、確認はするべきですよね。
震える指でクエストタイトルを触ると、内容が表示される。
【緊急指令、屍肉に挑戦せよ】
ここは神域であり、全てに神力が宿っている。たとえ、それが亡者の屍肉であったとしてもだ。ミシェル・ラウンデルに命ずる、腐った屍肉を食してみよ。さすればお前に新しい力を授けよう。
クエスト達成報酬(どちらかのみ)
『神力の杖』
神の力が宿った大杖。攻撃力、耐久力、魔力と三拍子揃っているが重い。
『神力の全身鎧』
神の力が宿った全身鎧。圧倒的防御力を誇り、魔法・物理攻撃を寄せ付けない。しかし、とてつもなく重い。
「なんですかこれ、ふざけたクエストですね。私を物で釣ろうたって無駄ですよ」
正直、神力の杖は興味あるけどクソ神の性格上、絶対になにかしらの罠であることは疑いようがない。
カイネのクエストなら、まだ挑戦したかもしれないけれど。
でも、満腹度の問題はどうしましょうか。
考えを巡らせたその時、ハッとして思い出した。
「そうです。称号取得時の報酬がありました」
メニューに戻ってメッセージボックスを確認すると『称号ゾンビハンター取得報酬』というのがあった。
しめたと、開いてみれば『グミ入りアイス』なるものが所持アイテム一覧に追加される。
早速、所持アイテム一覧を確認して補足説明を確認した。
【グミ入りアイス】
甘いバニラアイスに神域産の痩せるグミを入れたダイエット御用達の逸品。甘いスイーツを食べながら痩せられる、まさに革命のアイス。
「神域産の痩せるグミ、甘いスイーツを食べながら痩せられる、ですか? 何だか、うさんくさいアイスですね。でも、満腹度が少しは回復できるでしょう」
私は所持アイテム一覧から『グミ入りアイス』を選んで『使用する』を選択。
すると間もなく、私の目の前にカップのバニラアイスとスプーンが現れる。
「バニラアイスなんて久しぶりです」
殺伐とした場所で過ごしていたせいか、明るく可愛らしいデザインのバニラカップにとても癒やされた。
カップの蓋を開け、口に運んだバニラアイスはとても甘くて、あっという間にとろけてしまう。
「んん〜、甘くて美味しいです。こんなところでなければもっと美味しいでしょうけどね」
私は周囲のおどろおどろしい風景を見回すと、そそくさとアイスを食べてしまった。
途中に出てきたグミも案外美味しくて、アイスとグミという不思議な感触を楽しんだ。
「ふぅ、ご馳走様です。これで満腹度が少しは……」
突然、脳裏に鈴の音が鳴り響く。
でも、いつものような澄んだ音ではない。
まるで、何かを警戒するような音だ。
『グミ入りアイスの効果、体力全回復と満腹度マイナス30が発動しました』
「なるほど。体力全回復と満腹度マイナス30ですか……って、えぇ⁉」
まさか、ダイエットってそういうことなんですか⁉ 慌ててステータスを確認してみると、満腹度がゼロとなっていた。
「いい加減にしてください。初見殺しにもほどがあります」
『大声を発したので体力が減少します』
「う……⁉」
脳裏に響いてきた声に叫びたくなるが、必死に歯を食いしばって何とか堪えた。
怒ったところで、何も解決しません。
ゼロになってしまった事実は素直に受け容れるしかない。
私は深呼吸をすると、メニューを呼び出してステータス画面に進んだ。
【ミシェル・ラウンデル ステータス一覧】
レベル:10【白ゲージ(経験値)】
振り分けポイント:0
状態:普通
体力:1500/1500【緑ゲージ】
魔力:478/5000(2000+3000)【青ゲージ】
スタミナ:1500/1500【黄色ゲージ】
満腹度:0/100%【橙ゲージ】
生命力:G(15)【体力量】
精神力:G(50=20+30)【魔力量】
持久力:G(15)【スタミナ】
筋力:G(15)【物理攻撃力】
健康力:G(10)【物理防御力+状態異常耐性】
技量:G(10)【武術全般の成長力率上昇、様々な要素にプラス補正】
敏捷:G(20)【身軽さ、攻撃速度】
知恵:G(11)【魔法攻撃力】
知識:G(10)【魔法防御力】
運:G(10)【幸運に巡りやすくなる】
根性:F(30)【経験値増加、自然回復力上昇。致命的な一撃を受けた際、まれに神の祝福が発動】
「さっきは悩みましたが、満腹度がゼロになった以上もうやるしかありません」
私は振り分けを決定すると【緊急指令、屍肉に挑戦せよ】を開いてクエストを受注。
所持アイテム一覧から『腐った屍肉』を選択した。
さっきのアイス同様、私の目の前にどこからともなく現れたが、今度ばかりは心が躍らない。
むしろ、腐った臭いと見た目に絶望してげんなりする。
満腹度を回復できるものがない以上、これを食べてみるしかない。
でも、何が起きるかわからない。
私は補助魔法が使えるから、万が一に備えて最大魔力量を増加させたのだ。
ゾンビ達との戦闘後で魔力は少なくなっているけれど、満腹度が回復すれば魔力も多少は自然回復するはず。
その際、魔力最大値が高ければ自然回復量も多くなるので、と考えたわけだ。
「食べた後、状態異常になったら浄化魔法で回復すればいいんです。やるしか、やるしかありません」
クエストの説明文にも書いてあった。
この神域では、腐った屍肉であっても神力が宿っていると。
いえ、違います。
私の目の前にあるこれは、神力の塊。
ただ、形が腐った屍肉であるだけ。
そう、これは神力、神力、神力なんです。
私は息を飲みながらひたすらに自分に言い聞かせると、覚悟を決めた。
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