第12話 再挑戦

「なら、せめて取り返しのつかない要素ぐらいは教えてもらえませんか。私の神域攻略を余興として楽しみたいんですよね? 攻略が行き詰まったら楽しめる時間が短くなってしまうかもしれませんよ」


『それは一理ありますね。少々お待ちください』


カイネは念話を切ったのか。


それ以降、私が何を言っても返事がこなくなった。


お待ちくださいって言っていたから、クソ神に確認でもしているのかもしれない。


することもないから石碑の前で寝転んで自身のステータスを見つめていると、ふいに呼び鈴の音が脳裏に響いた。


『お待たせしました』


「いいえ、気にしないでください。何か確認してくれていたんですよね?」


『はい。一応、どこまで伝えていいかという点についてを詰めてきました』


詰めてきたって、まるで仕事のような言い方。


もしかして、カイネって事務仕事専門の神様か何かなのかもしれない。


『お伝えできる取り返しのつかない要素としては、成長ポイントをあまり極端な割り振りをすると、振り直しができないので攻略に苦労する部分があるということぐらいでしょうか』


振り直しができないので攻略に苦労する、ということは物理もしくは魔法だけでは突破できない場所が後々出てくる可能性がある。


健康力というステータスの横にあった【物理防御力+状態異常耐性】というのも怪しい。


腐ったドラゴンが瘴気を操ってきたことを鑑みれば、他にも瘴気を扱う魔物もしくは瘴気が充満した場所とかもあるのかもしれません。


その時、状態異常耐性が低いと事実上、攻略に詰まってしまうとか。


あのクソ神の性格上、あり得そうです。


「なるほど。他にはどうでしょうか?」


『現状だとお伝えを許されたのはこれぐらいです』


「あ、そうなんですか。神様の割にケチくさいんですね」


『ケチくさいですか。ミシェル、貴女は本当に面白いですね』


呆れ顔で肩を竦めると、カイネの笑みが噴き出した。


『では、折角ですから取得した称号についてもご説明しましょう。メニュー画面の【称号】を開いてみてください』


「わかりました、称号ですね」


【称号】

・食べられちゃった:敵からの標的率+1%

・終わりなき鍛錬の始まり:取得経験値+1%


「……こんなのいつ取得したんでしょうか?」


武具と鍛錬の祝福を得て間もない時には、こんな称号なかったはず。


首を傾げていると、カイネが淡々と言葉を続けた。


『様々な条件によって得られる称号は、取得することで様々な効果を受けられます。しかし、全てが取得者にとって利点となるわけではありません。ゾンビによって捕食されたことで取得した【食べられちゃった】の効果は、敵からの標的率+1%とあります。つまり、敵対者に狙われやすくなるということですね』


「あぁ、そういうことですか」


ゾンビに食べられたことで取得。


つまり、私が意識を失った後に得た称号ということだろう。


仮に生きていたとしても、取得したことに気付く余裕なんてなかったと思いますが。


それにしても、敵からの標的率+1%って結構嫌な効果です。


「これ、いらない称号を削除する方法はないのかしら」


『汚名返上できる称号もありますが、一度得た称号を削除することはできません。ですから、日々の行いには十分気をつけてくださいね』


「わかりました。でも、終わりなき鍛錬の始まりは【取得経験値+1%】ってあるし、前向きに頑張ります」


『はい、期待しております。それと私から選別がございます』


「選別……?」


首を捻ったその時、私の身体が暖かい光に包まれていく。


何が何だかわからず、身体を確かめてみるが異常はない。


「ちょ、ちょっとカイネ。一体、何をしたんですか」


『お伝えしたではありませんか。選別ですよ。ネルヴィアに許可をもらい、私もミシェルに祝福を一つ授けました。確認してみてください』


「え……⁉」


私は慌ててメニューを開き、祝福一覧の項目を開いた。


【祝福一覧】

・武具と鍛錬の祝福

・慧眼の祝福


「本当だ。新しいのが増えてます。えっと、慧眼の祝福ですね。効果を教えてもらえませんか?」


『はい、慧眼の祝福とは本質を見抜く力。敵の強さ、武具を装備するのに必要な能力値などなど。色々と役に立つことでしょう』


「すごい、いまの私に一番必要かもしれない祝福です。カイネ、ありがとう。神様をケチくさいと言ってごめんなさい。貴方はクソ神と違って良い神様ですね」


『ありがとうございます。しかし、神に良いも悪いもありませんよ。私もネルヴィア同様、ミシェルが気に入っただけです』


カイネは声しか聞こえないけれど、抑揚からはにかんでいるだろう感じがした。


『貴女が強くなっていけば、慧眼の祝福で見抜ける事柄も多くなっていくことでしょう。頑張ってください、応援していますよ』


「わかりました。じゃあ、そろそろ行ってみます」


『はい、お気を付けて』


念話終了して歩き出そうとしたその時、脳裏に再び鈴の音が鳴った。


『あ、そうそう。ゾンビ達に捕食される寸前、レベルが上がっておりましたから振り分けをお忘れなく』


「あ、そうでした」


私はメニューを開き、ステータス画面に進んだ。現在はレベル4でポイントは15余っている。


ここで最初に確認したときはレベル1だったから、レベルが上がるごとに5ポイントもらえたということだ。


どう振り分けようか。


暫し悩んだ後、私は一気に振り分けた。


「よし、とりあえずこれでいってみましょう」


【ミシェル・ラウンデル ステータス一覧】

レベル:4【白ゲージ(経験値)】

振り分けポイント:0

状態:普通

体力:1500(1100+400)/1500(1100+400)【緑ゲージ】

魔力:2000/2000【青ゲージ】

スタミナ:1500/1500【黄色ゲージ】

満腹度:70/100%【橙ゲージ】

生命力:G(11+4=15)【体力量】

精神力:G(20)【魔力量】

持久力:G(15)【スタミナ】

筋力:G(11+4=15)【物理攻撃力】

健康力:G(10)【物理防御力+状態異常耐性】

技量:G(10)【武術全般の成長力率上昇、様々な要素にプラス補正】

敏捷:G(20)【身軽さ、攻撃速度】

知恵:G(10+1=11)【魔法攻撃力】

知識:G(10)【魔法防御力】

運:G(4+6=10)【幸運に巡りやすくなる】

根性:F(30)【経験値増加、自然回復力上昇。致命的な一撃を受けた際、まれに神の祝福が発動】


「とりあえず、ゾンビ達を一蹴できるぐらいの筋力を得ることを第一優先。第二にアイテムボックス解禁が目標です。さぁ、やってやりますよ」


ポイントを振り分け終えると、私は白い光の扉の前に移動して息を飲んだ。


そして、ゆっくり光の中に足を踏み入れた。


次の瞬間、景色が一変する。


周囲の地面には骨が転がり、あちらこちらに墓石が立てられ、おどろおどろしい場所に、私はいつの間にか立っていた。


程なく、地面から次々と手が生えてくる。


「ゾンビ達。さっきはよくもやってくれましたね。今度はそう易々とやられません……って、ゾンビ達の頭に何か出てる?」


地面から這い出てきたゾンビ達の頭の上に『ゾンビ』という黄色の文字が浮かび、名前の下には赤いゲージが出ている。


もしや、これが慧眼の祝福の効果だろうか。


「まぁ、いいです。殴ってみればわかるはず……!」


私は補助魔法を発動して自らの身体能力をわずかばかり底上げし、試しにゾンビの頭を殴ってみた。


すると、ゾンビという表記名の下にあった赤いゲージが一気になくなる。


同時にゾンビが倒れ、消滅してしまった。


「なるほど。黄色い文字のゾンビが敵名で、その下にある赤いゲージが敵の体力ってことですね。わかりやすいです」


慧眼の祝福の効果を実感している間にも、ゾンビ達が呻き声を上げて次々と湧き出てこちらにやってくる。


私は鼻を鳴らし、杖を持つ手に力を込めた。


「レベル上げに丁度いいです。光栄に思ってください、経験値となって私の糧となれることを。目指すは、ゾンビ千体討伐です」


背後に気をつけつつ、私はゾンビ達を次々と殴打してなぎ倒していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る