第10話 終わりなき鍛錬の始まり

【メッセージボックス】

滅多にないがネルヴィアやカイネからの連絡が来ることがあるそうだ。カイネはまだしも、ネルヴィアからの連絡はあまり欲しくない。


【クエスト】

ハンターズギルドで受けた依頼や神域での特殊任務がここに表示されるらしい。履歴も確認できるらしいから、地上でハンター業に復帰したら便利そうだ。  


【装備一覧】

私が現在身に着けている衣服、装備品、装飾品が確認できる。驚いたことに、何かしらの特殊効果があればここに記載されるそうだ。尤も、そんな特殊効果のある物は遺物【オーパーツ】ぐらい。残念ながら、私の手元には遺物は一つもないので確かめようがなかった。


【魔法一覧】

私が使える魔法が確認できるというものだった。とりあえず、把握している補助魔法はすべて記載してあった。今後、レベルが上がれば使える補助魔法が増える可能性は高いから、時折見るようにしておこう。


【祝福一覧】

私が神から得た祝福と効果を確認できる。現状は『武具と鍛錬の祝福』しかない。神域を進めば、ネルヴィア曰くあと四つの祝福がもらえるはず。困難な道だろうけど、この項目に祝福の名が五つ揃うときが楽しみだ。


【所持アイテム一覧】

身に着けているものを含め、手持ちの道具がすべて確認できるという。忘れ物がないか確認するときに便利そう。二十種類まで持てると言われたが、その点だけはよくわからなかった。  


【アイテムボックス(精神力、知識、知恵の三項目が六十以上で解放)】

アイテムボックスは、補助魔法を扱えるC級以上のハンターぐらいから使えるという話を聞いたことがある。術者の魔力量に応じて許容量も増えるとか。利便性を考えれば、早々に扱えるようになるべきかもしれない。


【ショップ(レベル二十以上で解放)】

カイネが運営するお店で買い物ができるようになるそうだ。全く意味不明だけれど、とりあえず納得しておいた。


【武具作製(レベル二十以上で解放)】

ネルヴィアは鍛冶を司る神なので、その関係で所持アイテムやアイテムボックス内の素材を使って武具が作れるようになるらしい。これも全く意味が分からないけれど、とりあえず納得しておいた。  


【武具修理(レベル二十以上で解放)】

手持ちの武具が壊れた場合、アイテムボックスと所持アイテムを使って修理できるようになるらしい。


【アイテム作製(レベル二十以上で解放)】

武具作製同様、アイテム作製ができるらしい。素材と条件さえ満たせば遺物も作れるようになると聞いた時は心が躍った。


【アイテム修復(レベル二十以上で解放)】

遺物を含め、装飾品などをアイテムボックスと所持アイテムの素材を使って修復できるそうだ。地上の都会には、壊れた遺物がインテリアとして販売されていることがある。これを使いこなせれば、いろいろと悪いことができるかもしれない。


【武具・アイテム分解(レベル二十以上で解放)】

所持した武具、アイテムを分解して素材を得られるそうだ。私にはそういった専門知識はないし、やっぱり意味が分からない。だからそういうものなんだろうと、考えることにした。


【神力異界通信(レベル百以上かつ精神力、知識、知恵の三項目が百四十以上で解放)】

神様達が読む新聞を読ませてくれるらしい。異世界の知恵と知識を得ると作製で作れる物が増えるとか何とか。とりあえず納得しておいたけれど、異世界って何だろう。


【称号】

 特定条件を満たせばネルヴィアを含めた神様から与えられるらしい。能力上昇効果があったりして、手に入れれば利点があるそうだ。あのクソ神のことだ。きっと碌でもない称号をつけてくるに違いないでしょうね。


【オプション】

メニュー画面の枠、色、文字色、文字の形、言語などいろいろ変更ができるらしい。あと、メニュー画面を呼び出すときの言葉を好きなように変更できるそうだ。現状は『メニュー』だけれど、『ステータスオープン』や『ウィンドウ』とか何でもいいらしい。いるのかしら、この項目。


【ヘルプ】

 カイネが説明してくれた内容が記載されているらしく、項目やステータスについての説明を再確認したい時はこれを見ればいいそうだ。


『……以上になります。長丁場になり申し訳ありませんでした。何か質問ありますか』


「えっと、そうですね」


カイネの説明はわかりやすかったし、再確認したい時にはヘルプもある。


あとは、実戦あるのみね。


「大丈夫、です。あ、でも……」


その時、ある項目がなくて私はハッとした。


『でも、なんでしょうか?』


「あの、カイネに連絡したい時はどうすればいいですか?」


『私に、連絡ですか。はは、それは初めての質問です。しかし、私と話しても面白いことなんてありませんよ』


「いえいえ、面白くないなんてことないですよ。それに、私はこれからクソ神……じゃなくてネルヴィア様の神域に登っていかないといけないんです。さすがに話し相手というか、愚痴をこぼせる相手がほしいなと思いまして。どうでしょうか」


『なるほど。ミシェル、貴女は本当に面白い人ですね。では、こうしましょう』


カイネがそう言って間もなく、開いていたメニュー画面の一番下に【カイネ直通念話】という項目が追加された。


『これを押してもらえれば、基本的にはいつでも反応できると思います。しかし、できるのは会話のみ。どんな危機的状況であれ、力を貸すことはできません。予めご了承ください』


「わかりました。心が折れそうになった時、話を聞いて下されば十分です。ご丁寧に説明してくださりありがとうございました」


『いえいえ。ミシェルが大変なのはこれからです。どうか頑張ってください。陰ながら応援していますよ』


大変なのはこれからって、鍛錬のことだよね。


何だか、嫌な予感がした。


そしてこういう時、嫌な予感は大体当たる。


『では、時間停止を解除します。覚悟はよろしいですね』


「は、はい。大丈夫です」


本当は不安だらけで全然大丈夫じゃない。


でも、やるしかないんだ。


アウラとレイチェルがいる地上に戻るため、S級ハンター達に鉄槌を下すため。


私は神域を攻略するんだ。



返事をして間もなく、硝子が割れるような音が再び轟いた。



すると、あちこちの地面からゾンビ達が這い出てくる。


「よし、やってやります。まずは、さっき上げた筋力の確認です」


手に持っていた杖を構えると、私は近場にいるゾンビ達の頭を次々に殴打していった。


腐っていることもあるせいか、ゾンビ達の頭は想像以上に簡単にもげていく。


でも、祝福を受ける前と全然違う。


「すごい。ここに来たばかりの時、杖で殴ってもこんなに簡単に倒せなかったのに。これも筋力に振ったおかげでしょうか」


『一』しか振っていないのに。


ここまでの効果が実感できるなら、もっと振った時にはどうなるのか。


いつの間にか胸にあった不安は消え、期待と高揚感が私を満たしていた。


『おめでとうございます。ミシェル・ラウンデルはレベル2になりました』


「……⁉ もうレベルが上がったんですね」


ゾンビ達を十数体倒したあたりで頭の中に事務的なカイネの声が聞こえ、私はますます高揚感に包まれた。


でも、それは慢心と油断に他ならない。


調子に乗った私は、気付いていなかった。


ゾンビの数がどんどんと増えていることに。


『おめでとうございます。ミシェル・ラウンデルはレベル3になりました』


「もうレベル3ですか。この調子で……きゃあ⁉」


急に足が動かなくなり、私はその場に転んでしまう。


何事かと見やれば、地面から現れたゾンビが私の足をがっつり掴んでいた。


「こ、この、離してください!」


掴まれていない方の足で思いっきり蹴飛ばすと、ゾンビの頭が飛んでいった。


「はは、たいしたこと……」


ありませんでした、と続けようとした瞬間、首筋に激痛が走った。


「うが……⁉」と呻き声を上げて振り向けば、ゾンビが背後から私の首に歯を立てている。


「う、うそ。いつの間にこんなに増えたんですか……」


私は絶望し、顔から血の気が引いてしまう。


背後から迫るゾンビの数は、とても一人で殴り倒せる数ではなかった。


私は噛みついてきたゾンビ達を何とか振り払うと、体勢を立て直して必死に杖で抵抗する。


「やめて、こないで⁉」


しかし、抵抗むなしく、群がる無数のゾンビ達に身体を掴まれ、もみくちゃにされながら仰向けに押し倒されてしまった。


「いや、痛い。やめて、やめてぇええええ」


こんな、こんなことってない。


祝福をもらったのに、せっかく人生が変わるチャンスだったのに。


『おめでとうございます。ミシェル・ラウンデルはレベル4になりました』


私は、アウ……とレイチ……のとろに帰ら……のよ。それ、なの……こんな死、をする、ん……えない、あり……。


体中に爪と歯を立てられ、激痛と咀嚼音の中で私の意識は闇の中へ消えていった。


『おめでとうございます。ミシェル・ラウンデルは称号【食べられちゃった】及び【終わりなき鍛錬の始まり】を取得しました』



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