第5話 地上戦
ついにこの晩、魔王軍が3km地点まで来てしまった。ここまで迫って来ているならもはや航空支援は不可能に近い。すなわち地上戦の開幕である。爆撃でかなり数を減らしたとはいえまだ6万はいる。滅びかけの我々に比べるとそもそもの数に大きな差があるのだ。
ただこちらには機関銃陣地と鉄条網がある。散兵戦術を知らないこの世界の住人に対して絶大な効果を発揮するだろう。ここの科学力、数学、理論構築力は中世程度、統計やデータ解析なんてものもない。解決策を現場で提示することはほぼ不可能だろう。
また、早期発見、早期対処が重要だ。今日は前線指揮と行こう。
~~in敵軍
『明日は総攻撃決行の日である。総員、英気を養い、明日に備えよ!』
翌日明け方......
『総員、突撃せよ! 繰り返す、総員突撃せよ! 敵を根絶やしにしろ!』
「来たぞ! 騎兵突撃だ! 機銃手撃ち方始め! ライフル兵もとりあえず撃て! 敵の数の多さは戦ってきたお前らが一番知っているだろ! とにかく撃ちまくれ!」
――とある機関銃陣地にて
「勇者様からの指示だ! 撃ち方始め!」
「クッソ来やがった! 死ねっ、死ねぇ!」
ズダダダダダダダ......
「一体どんだけいるんだ! 数が多すぎる! バッタバタ倒れてるっていうのに減ってるように見えねぇ!」
「ゴタゴタ言ってねぇでもっと撃て! 死にてぇのか!」
ダン! ダン!
...ダダダダダッ
「弾切れだ! 装填手! 急げ!」
「わかってるから!(カチャカチャ、ガチャン)よし、撃て!」
ズダダダダダダダ......
『怯むな! 突撃しろ! 数の利を活かしやつらを滅ぼせ!』
――そのころの敵軍、一般兵
『畜生! なんだってこんな地獄みたいなところで戦わなきゃいけないんだ! 聞いていないぞこんなこと!』
『そんなこと言ってもどうにもならんだろ! とにかく走れ! さっさとこの時間を終わらせるん(ダン!)グハッ!!』
『大丈夫... じゃないな、クソッタレが! 積み上がる屍! 飛び交う魔法! なんて地獄だ!』
そうして、魔王軍は死屍累々の地獄絵図を通過し、鉄条網にたどり着くも......
『クソ、なんだこの金網は! これでは魔獣が走れんではないか! これを作った野郎は絶対に性格が悪いであろうな!』
そこにあったのはさらなる死屍累々の地獄であった。
「そこの指揮官らしき者を撃て。指揮官と思われる人物がいたら優先的に撃て。指揮系統を混乱させるんだ!」
ダン! ダン! ダン! ダン!
『魔獣から降りて伏せろ! 狙われるぞ!』
『いやそれを先に言え! 絶対こんなバケモノ相手に突撃なんて間違ってるって!』
『そりゃそうだが上の連中がいてどうにもなんなかったんだよ! 仕方ないだろ!』
『まあいい、俺達はどの道あいつらから食料を取らないと帰れない。やつらを滅ぼすぞ。さもなくば明日はない。行くぞ!』
クソ、あいつらに機関銃の弱点がバレたか。まあ気付くよな。そりゃ魔獣に乗るより絶対なんかの後ろに隠れたり伏せたほうが良いに決まってる。ただ、たとえ伏せたところでなにも変わらんよ。どの道撤退するにも移動が必要、攻撃するにも移動が必要、そして移動すれば撃たれる。詰みだ。
「鉄条網の向こうに火をつけろ。もう奴等は詰みだ。これでかたがつく。」
『なんだあれ...... 火だ! あいつら火をつけやがった! 人の心はないのか!』
『ウッソだろおい、もう、助からないゾ♡』
『HAHA、ヒトってもうどうしようもないと笑うんだね!』
『ハーハッハ! そうだね! 最後ぐらい笑って死のう!』
『『『『ハッハッハッハッハッ――—』』』』
そして、彼らは火に飲まれたのであった。
——この戦いの勝敗は明らかである。人類連合軍の完勝だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます