「転生したらエンマ大王でした」

@prisoner

第1話

俺が転生したのは――地獄!?

しかも配属先は“裁き課”!そう、いわゆる「閻魔大王」としての職務だ。

「え? 俺が閻魔大王? 」

地獄界では近年、人口増加と倫理崩壊による“死者ラッシュ”で、深刻な人手不足が発生。

その結果、「閻魔大王」は一人ではなくなり、今では班制で運用される始末!

俺はいわゆる死ぬ人数が一番多い世代で、エンマも裁ききれないで業務を分割下請化することになった。

そんなの聞いてないよ、と思ったが現実は容赦ない。いや、容赦ないのは地獄だから当然か。


実際忙しいったらない。死ぬ人間は増える一方で、減ることはない、と思ってた。

しかしそうでもないらしい。

牛頭馬頭に教わったところによると、ある時間が経つと亡者は六道のどれかに転生し直すらしい。そのあたりはよくわからない。元からいるエンマ大王はどうなったのか、と聞いたが、これまたはっきりしない。

牛頭馬頭も現実世界の官僚みたいで忙しがってばかりして、落ち着いて話をする暇もない。

では現実世界と変わりはないのか、というとそうでもない。

まず裁きは絶対で、間違いはない。エンマ帖や浄玻璃鏡(じょうはりきょう=亡者の生前の一挙手一投足が映し出される)といった動かぬ証拠をつきつけられてとぼけきれる人間はいない。いかに面の皮が厚くても、生死という絶対の根拠が崩れ去ったあとのことで、すべては空しい虚勢になる。

裁く側になると、ほいほいと調子に乗りそうになる。そこに牛頭馬頭が水を差しにくる。

「あんた、今は裁く側にいるが、まだ裁かれる立場になってないんだからね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「転生したらエンマ大王でした」 @prisoner

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る