宇宙《そら》とぶ竹輪
プラウダ・クレムニク
宇宙《そら》とぶ竹輪 全
外宇宙から巨大な竹輪が飛んできた。10年前のことである。
飛来したのは長さ32キロメートル、直径8キロメートルの物体であった。
この物体は実際には岩石でできていると思われたが、色と形があまりに日本の食品「竹輪」に似ていたので、誰かが「フライング・チクワ」と呼びその名前が広まってしまった。
空飛ぶ竹輪は1時間に約28回転する。また内側には逆回転する別の竹輪があることも確認された。
空飛ぶ竹輪は地球へ衝突するのではないかと言われたが、ラグランジュ4、ラグランジュ5の近傍を掠めて、再び外宇宙へと旅立っていった。
軌道計算をしたESA(欧州宇宙機関)によれば、「空飛ぶ竹輪」が再び地球に接近、ないしは衝突する危険は限りなくゼロに近くなったとされている。
「やる気ないみたいですよ。通過しちゃいました」
外宇宙から竹輪を飛ばした宇宙人の一人が言った。
「捕まえて蓋を2つ作ればいいだけなんだけどな。それができないのか。技術も資源もないみたいだ。次はもっと完成形に近いのを転送してみるか」
別の宇宙人が言った。
ラグランジュ4に巨大な円筒が浮かんでいるのが発見された。5年前のことである。
サイズも回転も空飛ぶ竹輪と同じ。なかには逆回転する円筒があるのも同じだ。
この構造物は「空飛ぶビール缶」と名づけられた。
一部の人が、これは宇宙人からの贈り物で、オニールのスペースコロニーに改造して使えると主張しているが、多くの人はそれを真に受けてはいない。
外宇宙に住む親切な宇宙人が、今度はもう完成したスペースコロニーを送るしかないと思っていることは誰も知らない。地球人類に滅亡の危機が迫っていることも。
宇宙《そら》とぶ竹輪 プラウダ・クレムニク @shirakawa-yofune
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