第三十話 ラベンダー園

「う〜ん、なんか、いい香りが漂って来たかも〜♪」


 北海道最終目的地のラベンダー園に向かって車を走らせていると、車内にフローラルの香りが漂い始めてきた。

 緊張感が緩和されるような、心が落ち着くようなとても気持ちのいい香りだった。


「わぁ〜、隼人さま〜、綺麗ですよ〜」


 !?

「レンちゃん、見えたの?」


「見えました〜、斜面いっぱい紫色になっていました〜」

「ホントに〜、いいな〜♪いいな〜♪」


 運転している僕からは見えなかったが、助手席側から窓の外を眺めていたレンちゃんにはラベンダー園が目に入ったらしく、歓喜の声をあげていた。


「うげ〜っ!」


 もうすぐ到着だと思いながらウキウキ気分で運転していたのだが、かなり長い車列を発見しテンションだだ下がり。


 さすがは超有名観光地……大渋滞ですか……。

 これは駐車場に入るまで時間が掛かりそうだ。


「山下隼人よ。今回は園内を回る前にアイスでも何でも食べていいぞ」


 !?

 あらら、珍しいこと?

 白フワちゃんのいきなりの提案にビックリしていると、理由を聞く前にさらに言葉を重ねてきた。


「園内はかなり広いし、ラベンダー畑は傾斜がキツくなっているからな。まずは運転疲れを取るといい」


 やっさし〜!

 機嫌がよろしいようでポンポン、フワフワと飛び跳ねている姿は今日も愛らしく、メルヘンの中の住人のようで微笑ましい気持ちになってくる。


 うん?でも何か言ったな?

 かなり広くなっている?

 傾斜がキツい?


 何でも園内は東京ドーム5個分の敷地面積があり、100種類以上、約15万株のお花が栽培されていて大まかに8つのエリアに分かれているとのこと。

 そこのどこかにひっそり咲いている、金色をしたラベンダーを見つけないといけないとのこと。


「金色に輝いていて、異彩を放っていて見つけやすくなってたりしないの?」

「しないわね」


「それってやっぱり、普通の人には見えないの?」

「もちろん」


「ひっそり咲いているってことは、かなりじっくり見て回らないと見つけられない感じ?」

「そう」


 え〜っ!マッジ〜!

 そんな広いところから〜?


「ちなみに傾斜はかなりキツいからな、雨で地面が濡れていたりすると、足を取られて滑り落ちてしまうほどの急斜面だから。そのエリアでゴールデンラベンダーを探すのは、上り下りでかなりしんどい思いをすることになるだろう。覚悟しておけよ」


 ひゃ〜!マジか〜!

 東京ドーム5個分の敷地面積……キツめの傾斜あり……約15万株の中から1本のお花を見つけないとダメとか……

 ……それは無理ゲーというやつでは?


「でも〜、急斜面じゃないエリアもあるんでしょ。そこで見つけることができたら、あとは普通に観光でいいの?」


「見、つけ、ら、れ、れ、ばね」


 何その含みのあるような言い方!?


「見つけ出すのに、もうちょっとヒントとかはないんですかね?」

「ヒントね〜?」


 ゴールデンラベンダーは訪れる人によって、8つのエリアのどこに現れるのか違ってくるらしい。


 なぜかというと8つに分かれているエリアのどこにゴールデンラベンダーが咲いているかによって、その人の運勢が決まるようになっているのだとか。


「金運、仕事運、恋愛運、健康運、対人関係運、家庭運、勝負運、才能運だ。お前はどこでゴールデンラベンダーを見つけることができるのかな?」


 南側エリアで見つけられれば、金運の良い人生。

 北側なら、仕事運のいい人生とかどこのエリアで見つけられたかで違ってくるらしい。


 なるほど!そうなってるのね。


 金運はもうすでにあるようだし〜、お金があるんだから、何かに勝負しなくちゃならないなんてこともないだろうし〜。

 何かに才能を発揮して有名になってやるとかもないし〜、仕事はクビになったし〜、家庭は崩壊したし〜、いまさら恋愛する気もないし〜。


 旅先でいい出会いに恵まれるようにとか、死ぬ間際まで健康でいられるようにとか、対人関係運か、健康運あたりが良いといいな。


 となると、その辺りのエリアを重点的に探せばいいのかな?


「お〜!ようやく駐車場入り口まで来たよ」


 かなり待つかなと思ったのだが、白フワちゃんの説明を聞いていたらあっという間に駐車場の中に案内される運びとなった。

 空いていたスペースに停め、白フワちゃん、レンちゃんを伴い園内へと入っていくと、そこには天国のお花畑を想起させられるような幻想的な風景が広がっていた。


 赤、ピンク、黄色、オレンジ、などなど色とりどりのお花が視界いーーっぱいに咲き乱れている。


「隼人様〜〜!ものすごい光景ですね〜!」

 真紅のエゾカンゾウの化身となっているレンちゃんも、大興奮してしまうような絶景が広がっていた。


 人工的に整えられているお花畑なのだが、この絶景には白フワちゃんも大喜びでピョンピョン飛び跳ねている。


『ピンポンパンポーーン、◯◯よりお越しの◯◯様、お連れ様がお待ちです……』


 その時、迷子の案内を知らせるアナウンスが鳴り響いた。


「二人とも興奮しすぎてどっかに行っちゃわないでよー。特にレンちゃん、絶対に離れないでよっ!」


 こんなところでレンちゃんを見失ったら、絶対に見つけられる自信はない。まさか園内放送で呼び出すわけにもいかないだろうから。絶対に二人から目を離さないようにしよう。


「山下隼人よ。取り敢えず最初のエリアにはゴールデンラベンダーはないようだな」


 そうなんだー!それは残念。

 あったら、後はのんびり観光しながら園内を一周することができたのに……。


「で?最初のエリアにいたら、何運が上がっていたの?」

「恋愛運だ」


 恋愛〜!?


「良かったな。健康運エリアじゃなくて」


 まあそうだけど、恋愛運、無いってはっきり言われるのもなんか辛いかも……。


「隼人様、一生独り身で頑張って生きていってくださいね」


 レ、レンちゃん……容赦なさすぎです……!?


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