教室に蘇る壇ノ浦——少年たちが宿す、かつての戦場
- ★★★ Excellent!!!
現代と平安が重なり合うこの物語は、まるで記憶の海に浮かぶ小舟のよう。嵐の夜、魔物と共に蘇る前世の記憶——中でも伊月が壇ノ浦の記憶に呑まれ、激しい頭痛とともに教室を去る場面には、時を超える痛みの実在を感じました。「平知盛だった君が、今世では僕を討ちに来ればいい」という眞城の言葉は挑発でありながら、宿命への祈りのようでもあり、静かに胸を打ちます。
運命とは何か、記憶とは誰のものか——その問いを、読者の魂に優しく投げかけてくれる作品です。教経としての無念を抱える朝霞の姿にも、前世という過去と今という現在の間で揺れる、人間の複雑な美しさが宿っていました。
少年たちは“誰かを守れなかった記憶”とどう向き合うのか。戦うとは、断ち切ることではなく、受け継ぐことかもしれない――そう語りかけられた気がしました。