騙されちゃうんだよ

 初日があんまりだったから、直属の部長と人事部長に、あれはないわ~ってチクった。

 そのうえで、私が休んだ理由を周囲が理解していないことが一因だと思うから、パワハラによるメンタル不調だと説明することを要求した。


 知ってるけどさ。

 わたしがメンタル不調で通院している、っていうことを公表することも、野郎がパワハラしたっていうことを公表することも、個人情報保護に引っかかってくるっていうこと。


 でもさ、本当だったら加害者と被害者は隔離するべきところを同じ事務所にするっていうことを受け入れているわけ。歩み寄っているわけ。


 そこで被害者が悪者になっているなんてありえない。説明したとして、きっともう、彼女たちの印象を覆すことは出来ないとわかっているけれど。


 事実は事実。

 復職環境を整えるのは会社の義務だ。説明はして欲しい。


 そうしたら。

 直属の上司から後輩には、説明を行うと返事が来た。


 要求しておいたのは私だけれど、びっくりした。

 後輩だけとはいえ、説明するんだ。


 後輩の態度がそれで何か変わるとは思えないけれど。


 でも、それについては、これからは彼女が体調不良を訴えてきても私は突っぱねるからもういい。


 彼女がコロナ後遺症で苦しんでいた時、たくさん残業を変わった。

 その理由でコンサートに行ったと聞かされても笑って済ませた。お友達と一緒だったなら、体調も良くなったなら行くよね、って。


 そして、私が休んでいた3か月。

 きつい日もあったと思うけど結局頑張れたじゃない。私が残業を引き受けることをしなくても乗り越えられたなら、私は体よく扱われていたってことじゃないか。


 ばからしい。残業が多いからって評価下げられたのに。

 だからもういい。今後は残業を引き受けることはしない。


 そして、もうひとつ。

 人事部長から電話があった。


 この間もだったけど、2時間近くしゃべっていた…。

 いろいろ聞いてくれてありがたいし嬉しい。

 でも、部長。ごめんなさい。本当はね、言いたいこと言ったら電話切りたいんだ、私。部長も嫌じゃない? 


 というもう一つの本音。


 でもさ、自分の時間を使って、これだけ一人の人間に時間をかけてくれる部長って、多分そんなにいないと思うんだよね。直属の上司でもないのに。


 完全無視されました~、ってことについては、全社一斉にモラハラ禁止のお達しを強めに出すらしい。

 あれ見て改善しない奴はバカだ、とおっしゃっていました。どんな内容かはまだ確認していないけれど、援護射撃は任せろということ。だから、足元を掬われるようなことはするな、と言われた。そこは思い切りストレスなんだけど。


 前提がね、私の出社継続なわけよ。

 しんどいから正式に休職することも考えていたのに、こっそり逃げ道をふさがれている気もする。


 酷いのは、直属上司への不満も聞いてくれて同意してくれること。縦割りだから直接注意することは出来ないけれど匂わせるくらいはしておく、なんて言ってくる。


 たくさんたくさん、いろんな人に騙されてきた。

 だけど、もしかしたらと思って信じて、裏切られるってことを繰り返してきた。


 掌で転がされている、と思う自分と、ここまでしてくれているのだから応えて頑張ろうという自分がいる。


 分析は得意。でもその分析ではかれないのが人の感情。


 もっともっと、賢く切り捨てることが出れば良いのに、感情の面ではお人好しで人情家で切り捨てることができない。


 そして、見返りを求めてしまう。

 人から見るとそう見えるらしいけれど、ちょっと違うんだよ。 感情もロジックで処理してしまっているだけなんだ、多分。


 自分が嫌だと思うことは人にしてはいけない。目立たない行いでも必ず見ている人は居る。そういったことを真に受けて。こうしてあげたらこうしてくれる。こうしておかなければ受け入れられない。


 言葉にすればその通りなのだけれど、感情の全てを言葉で表現することは出来ない。それを体感として理解できない。


 だから、ひとの言葉を真に受ける。ひとに見返りを求める。


 かなり話がずれてしまうけれど、人工知能は私と同じ。言葉で理解しても体感として感情を理解することは難しいだろう。これが、人工知能の限界だと思う。


 上手いこと言われているだけなのかもしれない。結局、パートたちへ直接の説明をするわけではないのだから。そのうえで、私が出社すれば人員の確保はできるから。


 わたしは、また我慢し続けるのか。どうするのが良いのか。

 こう考えちゃうこと自体、騙されちゃってるな、とも思う。 


 ただ、ただね。人間はともかく。

 愛機は私を待ってくれていたと思えたんだよ。


 仕事することは楽しかったんだ。


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