第31話 あなた…一体…誰?
「千尋っ! 大丈夫?」
ハゲオヤジから解放された麻梨亜が胸を腕で隠しながら近寄る。するとハゲオヤジは再び手首を掴み、持っていたロープの端で麻梨亜の手首もあっと言う間に金網にくくりつけてしまった。
「大人の言うことはちゃんと聞くものだよ。今夜はラッキーだなあ。こんな可愛い子猫ちゃん達の裸をじっくり拝めるんだからね」
そう言うと、ハゲオヤジは金網の間から手を突っ込み、身動きがとれない俺と麻梨亜の服を、胸の上まで捲りあげた。二人の下着がハゲオヤジの目の前に、惜しげもなく晒される。
「はぁ、はぁ、はぁ……中身は、一体どうなってるんだろうねえ。さあて、じっくり拝ませてもらおうかなぁ」
ニヤニヤしながら下着に手をかけるハゲオヤジ。どうにかしてこのピンチを脱出せねばと思った時、ふとあるアイデアが浮かんだ。
(レイ! なんとかこのロープを解いてくれないか?)
(む、無理です。私、そんなことできません!)
(できないって? 昼間は定宗と一緒にお茶を飲んでたじゃないか! ちゃんと茶碗を持ってるのを俺は見たぞ!)
(あれぐらいの事ならできますけど、ロープを解くとなると私では無理です。定宗さんならもしかしたら……)
(あいつならできるのか? よしっ、じゃあ急いで定宗を呼んできてくれっ!)
(分かりました! 千尋さん、それまで絶対に〇っぱいは見せちゃだめですよ!)
そう言い残すと、レイはぴゅーっと女子寮の方へ向かって飛んでいった。
「君はさっきから何をしているんだい? 誰もいない場所をじっと見つめたりして。まあいい。君は後のお楽しみにとっておくよ。まずは麻梨亜ちゃんを……」
そう言うと、ハゲオヤジは麻梨亜の下着の下のあたりに指を掛けた。そして徐々にそれを上へとずらしてゆく。
「やめてっ! 麻梨亜にヒドいことしないで! 麻梨亜にするなら私にしなさいよ!」
レイが定宗を連れてくるまでに何とか時間稼ぎをしなければならない。俺はなるべくハゲオヤジの注意を自分に引きつけようとした。
「へへへ。そんなにオジサンに見てもらいたいのかい? 分かったよ。じゃあ君の方から見ることにしよう」
ハゲオヤジはヘラヘラと笑いながら俺の胸に手を伸ばした。俺の予想ではもうすぐレイが戻ってくるはずである。俺の下着にハゲオヤジの指が掛かったそのとき……。
(千尋さん!)
レイが俺を呼ぶ声が頭の中に響く。ナイスタイミング! これで助かった!
(早くロープを解いてくれ。もう少しで〇っぱいを見られるところだったよ。まあ、見られてもどうって事ないんだけどな。だって作りものだし。あははははは)
(千尋さん、笑ってる場合じゃないです! 定宗さんはここには来られません)
(へっ? どういうこと?)
(近づけないんです)
(近づけない? 何で?)
(だって……悪霊退散のお札が……)
(あっ……)
悪霊退散の札を張り巡らした大型犬ようの檻の中で、体育座りをしながらいじけている定宗の姿が頭に浮かぶ。俺は自分のしてしまったことに、今更ながら後悔した。
「へへへ。さあて、君はいったいどんな〇っぱいをしているのかなぁ」
ハゲオヤジの指が下着のカップに掛かる。ハゲオヤジは掛けた指をゆっくり上へと動かした。
「やめてっ! 千尋に変なことしないでっ!」
麻梨亜が思わず大きな声を出してしまう。そのとき……
突然、手首を拘束していたロープが切れた。まるで鋭利な刃物で切られたかのようにスパっと。俺と麻梨亜は金網から解放された。
どうして急にロープが切れたのか? それが謎だったが、目の前でどや顔をする定宗を見て合点がいった。
だが疑問は残った。悪霊退散の札に囲まれた定宗が自力で檻から脱出できるはずはない。定宗と同じ幽霊であるレイもお札を外す事などできないのだ。
では一体どうやってそこから脱出できたのか?
その鍵を握るのは、俺の目の前に立っている黒髪の美少女が握っているのだろう。
そう。いつの間にやら俺の目の前には、どや顔をした黒髪の美少女が立っていたのだ。
「あなた……いったい……誰?」
ハゲオヤジに脱がされたままの、はだけた胸を手で抑えながら、ハ〇テン中古車センターのCMのお姉ちゃんのような口調で美少女に尋ねた。
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