第29話
(これが、柱を担う神の力なのか……)
光が収まる。
「お疲れ様でした」
立ち上がると聖職者に外に案内される。女神支部の裏庭のようだ。周りに人はいない。
「では、こちらで試し撃ちをお願いします。今回登録された魔法はウィンドシールドですので、人に向けなければ普通に起動していただいて構いません」
(魔法がきちんと登録されたか試せということか……)
「魔法のイメージはどんな感じだ?」
魔法や魔術はイメージがしっかりしないと発動しない。ウィンドシールドは見たことがないので聖職者に魔法のイメージを聞く。
「……ウィンドシールドは風で流れる壁を作るイメージです。風の向きは自由で、局所的な風……つまり壁を薄くするようなイメージにすると防御性能が上がります」
「なるほど…分かった……」
大体のイメージが定まったので、手を向けてウィンドシールドを放つ。イメージは薄い風の壁だ。
「ウィンドシールド」
下から上に強い突風が吹き荒れる。発動は出来たが、シールドにしては風の威力が高すぎる気がする。
「1度目で……すごいですね……成功です……」
「ぐ……強すぎないか……こっちまで被害が出そうなんだが……」
「おそらく壁のイメージが薄すぎるのでしょう……2~3m程にすると制圧力もあがり、こちらへの被害も少なくなると思います」
「分かった……」
ウィンドシールドを一度消し、再度イメージし直してから放つ。
「ウィンドシールド」
次は上から下に風が流れるように発動する。この方が制圧力という点に関しては強くなるだろう。幅は3mの突風が地面に吹きかかる。
「補正能力も高い……」
「こんな感じか……?」
上手くできた気はするが、念のため聞いておく。
「は…はい、完璧です…」
「そうか…良かった」
「素早い魔纏、完璧なイメージ補正力……失礼ですが、貴族のご子息様ですか?」
「ん……いや、違うよ」
ウィンドシールドはこれで完璧らしい。聖職者が俺のパない魔法能力に驚き、お偉い出身だと勘ぐるが否定する。
「そうですか……」
「うん、ただの平民だ…」
「……ただの平民の子供は1000リカを簡単には出せないのですが……」
「ちょっと金持ってる子供だ」
「……そうですか…まあいいでしょう…教会にとってはどちらでも変わらない、ただ1人の教徒です」
聖職者が1人で納得しているので、帰ることにする。
「…今日はありがとう、じゃあな……」
「ちょっと待って下さい」
「なに?」
聖職者に引き留められたので尋ねる。
「いきなりの話で申し訳ないのですが、それほどの魔法の腕です……魔法学校に興味はありませんか?」
「魔法学校?」
「はい……教会推薦枠で魔法学校に行くと入学費、授業料が教会持ちになりますよ」
推薦枠で行くと、無料になるらしい。魔法には興味があるが、無理だな。いろいろ予定がある。
「魔法学校がどういったものか分からないが、難しいな。俺は冒険者になるんだ」
「冒険者……冒険者は15歳からでしたよね……魔法学校は12歳から入学できます。就学期間は3年なので、そのあと冒険者になることも可能ですよ」
「そうなのか……」
「はい。まあ、卒業後に教会で働かない場合は、奨学金は返済していただきますが…」
「へー、でも今は無理だ。やることがあるんだ」
「やることですか?」
(今は手紙を届けに行かなくてはならない。もしかして、教会の人ならマリアを知っているかも知れない…後で聞こう…)
「そう、やること……」
「……そうですか、わかりました。もし気が変わったら、ここカーサル女神支部までお越しください。他の支部ではダメですよ……ハハ」
聖職者が冗談交じりに微笑む。
「分かった。そうするよ……」
「はい」
早速マリアについて尋ねることにする。
「なあ、あんた…マリアって人知ってるか?」
「マリア……もしや、尋ね人ですか?」
「そう…」
「尋ね人なら、情報屋が一番ですが……うーん…マリアなら1人だけ心当たりがあります」
「知っているのか?」
「東区では、結構知っている人はいますよ……花屋で働くマリアさんは、兄が有名な兵士でしたからね」
「兄が兵士……」
「はい……残念ながらお亡くなりになってしまいましたが……」
(死んでいる兵士の兄がいるマリア……これは当たりかもしれない)
「俺が探しているマリアかもしれない……どこにいるんだ?」
「えーと…花屋は……ここから大通りに出ていただいて、東に向かっていただけると道沿いにありますね」
「東側の大通り沿いか……分かった…ありがとう」
「いえいえ、あなたに幸があらんことを」
聖職者に挨拶をし、教会を出る。
(見つかった……多分探しているマリアだ……首都カーサルについてからこんなに早くみつかるとは……ついてる……)
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