第28話
(レンガ造りの街並み、舗装された通り、でっかい城……)
ようやくノービアの首都に到着した。ここまで、15日以上かかった。馬車に乗ったり、走ったり、マリアを探したり疲労困憊だ。ちなみに、首都の名前はカーサルというらしい。
(気になるところは沢山あるが、今日は宿を探して休もう……)
教会、魔道具屋、城、見るべきところは多くある。マリアは未だ見つかってはいないが、なにか手掛かりがあれば幸いだ。
ここに来るまで、何度か村で宿のお世話になってきたので、宿の見た目から大体の値段が分かるようになった。20~30リカ程度で泊まれる宿を探す。
極端にボロかったり、大部屋に集団で寝るように言われる宿は、5〜10リカ程度で泊まれる。昔はよくお世話になった。普通の宿は、20〜50リカとピンキリだ。料理屋と一緒になってたり、内装に力を入れていたり、宿によって様々な特色がある。結構綺麗にしているでかいところは、50リカ以上する。100リカ以上は高級宿だ。俺には関係ない。
今探している宿は、普通の宿の中でも安いところだ。防犯だけしっかりしていればいい。
ここは首都だ、宿街で簡単に目当ての相場の宿を見つけ、泊まることができた。明日は探索で忙しくなるはずだ。今日はもう寝ることにする。
(外だと、魔法をぶっ放してから寝ることができるんだけどな……魔法がぶっ放せないとストレスを感じる体になってしまった……軽くステータスでも見ながら寝るか……)
首都に来るまでの道中でMPはここまで成長した。
MP
最大魔力 141(984/1410)
火属性効率 50/50x2(100/10000)
水属性効率 50/50(3150/10000)
風属性効率 50/46x4(8733/10000)
光属性効率 50/50(150/10000)
氷属性効率 100/100(200/10000)
生成属性効率 150/150x4(108/10000)
風属性効率が上がり、風魔法が魔力23で撃てるようになった。風魔術は相変わらず魔力12のままだ。おそらく魔力11.5で小数点は切り上げなのだろう。
(地道に頑張ろう……地道に……)
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「XXX!XXX!起きろ!」
「ん……?」
父さんが、無理やり俺の体を起こす。
「逃げるぞ……しっかりすんだ……」
「どーして……?」
「王国が裏切った。研究もろとも我が一族を滅ぼすつもりだ」
(夢だ……父さんはもういない……)
父さんに手を取られ、屋敷から外に向かう。外には馬車が一台止まっており、母さんと妹が乗り込もうとしている。
(懐かしい……えーと……次に俺が言った台詞は……たしか……)
「どこに行くの?」
「どうするか……とりあえず、今は逃げるしかない……早く乗り込め……」
父さんが早く馬車に乗るように急かす。すると、屋敷の近くに轟音が鳴り響いた。
ズドーン!!
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(朝だ……懐かしい夢を見た……あれが父さんとの別れの日だった……)
少しセンチメンタルになったが、せっかくの首都だ。早速、探索することにする。もちろんマリアを探しながらだ。まずは教会まで行って、新たに登録可能な風魔法がないか、いくらで登録できるのか確認したい。
教会を見つけるのは簡単だ。城ではない、城っぽい建物は大体教会だ。敷地内に崇める7柱のそれぞれの部署があるため、必然的に大きくなる。
7柱とは、この世界を支えている上位神の内の選ばれた存在であり、様々なシステムを作っている。以前紹介したように、龍神はステータス、女神は魔法、太陽神は魔術を含む術式全般のシステムを作り管理している。その他にも、精霊神、創造神、武神がいて、この6柱を束ねる最高神がいる。
しばらく探すが、教会は見つからない。首都は結構広いことが分かった。
(どこだ……教会?)
前言撤回、教会を見つけるのは簡単ではなかった。迷ったので、道を歩いている人に尋ねることにする。
「なぁ、そこのあんた…教会って何処に在るか分かるか?」
「あん...俺か?教会か……ステータスなら、西区の豪華な建物で確認できるぞ」
「ステータスじゃなくて魔法なんだ。まあ、ありがとう…西区だな……」
「いや待て!魔法は東区だ…ここの教会は、西区と東区に別れていて、女神支部と太陽神支部は東区なんだ」
「そ…そうなのか……ありがとう…東区ね…」
「おう」
教会は西区と東区に別れていて、目当ての女神支部は東区にあるらしい。お礼を告げ、東に向かう。
数刻後、デバイスのマップを用いながら、なんとか教会にたどり着く。大きくはないが、豪華な建物が2棟並び立っている。
(早速入るか……あ…魔法陣は消しとかないとまずいか…)
魔法陣は、教会と魔術師にとって飯のタネで機密だ。その魔法陣を子供が腕に刻んでいたら、どんなイベントに発展するか分からない。そんなドキドキイベントは体験したくないので魔法陣を消してから、教会の敷地内に入る。
看板の指示に従い、女神支部の建物に入る。正面には女神の像があり数人が祈りを捧げており、左右には受付とおもわれるカウンターに聖職者が立っている。
とりあえず、魔法について確認するため受付に向かい聖職者に尋ねる。
「ここで登録できる風魔法を教えてくれ」
「魔法の登録ですか?風魔法となると、ウィンドバースト、ウィンドシールドが登録可能です」
この支部ではウィンドバーストとウィンドシールドが登録可能らしい。ウィンドバーストはもう登録済みだ。新しく登録できるのはウィンドシールドのみらしい。
「そうか……ウィンドシールドの登録をしたいんだが、いくらかかる?」
「……1000リカ程の喜捨で登録が可能です……」
(1000リカ……バカ高いな……)
財布に入っている残りの金の半分以上が持っていかれる。だが、ポーションを売れば、まだまだ余裕はあるので、ここは登録することにする。
「じゃあ、これで登録を頼む」
財布から金貨10枚を取り出し渡す。ちなみに金貨1枚で100リカ、銀貨1枚だと10リカ、銅貨1枚では1リカだ。
「はい、確かに受け取りました。魔法陣をお持ちしますので、少しお待ちください」
聖職者が魔法陣を取ってくるまで暫し待つ。
「お待たせしました」
「ああ」
「では、こちらへ」
奥の部屋に案内される。魔法登録の祈りは、魔法陣の機密を守るため別室で行われる。奥の部屋は、女神像がただ一つ佇んでいるだけの質素な部屋だ。その女神像の前に立たされる。
「では、祈りを」
俺は聖職者に頷きで返してから、女神像に片膝をつき祈りを捧げる。祈りは崇敬の念を抱いてさえあればなんでもいい。
(あー女神や女神…新しい魔法を与え給え)
俺が祈りを捧げていると、聖職者が目の前に木箱を置いた。おそらく中に魔法陣が入っているのだろう。
そのまま祈りを捧げていると、突然に女神像と俺の体が光る。
(おお……なにか入ってくる感じがする……あたたかい……)
前に魔法登録したのは数年前だ。こんな感覚になることは忘れていた。優しくあたたかい感覚に加え、巨大な力の片鱗も感じる。
(これが、柱を担う神の力なのか……)
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